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パイピングとクイックサンド現象とは?土木で使う安全率計算もサクッと解説

砂中の矢板に沿うパイピング

今回のテーマは【パイピングとクイックサンド現象】

パイピングとクイックサンド現象は土工・土質の土木の基礎知識。

さらに安全率計算もサクッと解説していきます。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ!

 

パイピングとクイックサンド現象とは?土木で使う安全率計算もサクッと解説

パイピング現象

パイピングとは、浸透水によって構造物が浸食されたり、膨れ上がったりして破壊する現象のことです。

地盤のよわい箇所の土粒子が洗い流され、水みちがつくられ拡大してしまいます。

最終的にはボイリングと同じ状態になります。

ヒービング・ボイリング・盤ぶくれの対策については別記事で併せてご確認ください。

そして事例としてはこんな感じ 🙂

パイピング
透水性の基礎地盤の上に、基礎地盤より透水度の低いダムを築造 ダムの底に沿う基礎の部分が浸食されたり地盤が膨れ上がったりする
比較的透水度の高く、深い地盤に矢板の締め切りを実施する 矢板に沿う部分の基礎が浸食されたり地盤が膨れ上がったりする

【パイピングの地盤状態】

パイピングの土の状態

ボイリングや盤ぶくれと同じ地盤(砂質土多め)で、水みちができやすい状態のとき、パイピングは起こりやすくなります。

水みちとは地盤のなかで水が通りやすくなっている部分のこと!

杭の引き抜きあとやボーリング調査後、さらにはすでに打設した杭のまわりなどで水みちがつくられやすいです。

 

さらにパイピングには、鉛直方向に起こるものと水平方向に起こるものがあります。

鉛直方向

鉛直方向のパイピング

 

透水性基礎地盤の半ばまで締め切りのため矢板が打ち込まれた場合に、矢板の下流側に接する部分に見られる

不透水性のダムを透水性地盤の上に築造した場合に、ダムの下流側斜面先付近に見られる

これは、土中における浸透水の鉛直方向の水圧が大きい時に、その点より上方にある土を押し上げるため、土の表面が上方に膨れ上がり、ついには土砂が水と共に噴出して、基礎地盤を破壊します。

このような現象は【クイックサンド現象】とも呼ばれ、井筒基礎を沈下させる場合、井筒の中の排水を行いつつ掘削しているうちに発生し、事故を生じたこともあるそうです。

砂中の矢板に沿うパイピング

そして上記の図において、矢板の先端の深さにおける浸透水の圧力uは以下のとおり計算できます。

浸透水圧力計算

浸透水の圧力u=(1/2)γH

γ:水の単位体積重量

H:水頭差

また過剰間隙水圧は矢板から離れるに従って減少するので、仮に根入れ長さDの1/2の幅の土柱についてつり合いを考えてみましょう。

矢板からD/2だけの幅の土柱の受ける平均過剰間隙水圧をh₁とすれば、土柱の受ける揚力Uは、

揚力U=(1/2)Dh₁γ

であり、土柱の重さはW=(1/2)γ’D²であるから、安全率は

安全率Fs=W/U=(1/2)γ’D²/(1/2)Dh₁γ

=γ’D/h₁γ…①

となります。

h₁は通常、流線網を描いて求めますが、一般にγh₁=(1/n)γHと考えられるので、n>1としてクイックサンドに対する安全率Fsは

Fs=n(Gs-1)/(1+e)×(D/H)…②

クイックサンドが起こる限界動水傾度iは、①の式においてFs=1とおけば、次の式で表されます。

限界動水傾度i=h₁/D=(Gs-1)/(1+e)…③

そして上記の式は、臨界動水傾度とも呼びます。

一般に鉛直方向のパイピングが発生しないためには、②式の安全率は最小5、だいたい8~12ぐらいにとることが推奨されていますので確認してください。

クイックサンド現象が起こると、矢板などに沿う下流側の部分の土砂が沸きだすばかりでなく、矢板の下をくぐって矢板の上流側からも土砂が流出し、パイピングが生じます。

これを防止するためには、矢板の下流側の表面に透水性の押さえ盛土(単位面積あたりの重量w)をすれば、②の式は以下のようになり、安全率Fsが増大します。

Fs=【n(Gs-1)/(1+e)×γD+w】/(γH)…④

パイピング計算式 定義
浸透水の圧力u=(1/2)γH u:浸透水の圧力

γ:水の単位体積重量

H:水頭差

D/2だけの幅の土柱の受ける平均過剰間隙水圧がh₁

U:揚力

i:限界動水傾度(臨界動水傾度)

w:矢板の下流側の表面に透水性の押さえ盛土(単位面積あたりの重量)

Gs:土粒子の比重

e:間隙比

揚力U=(1/2)Dh₁γ
安全率Fs=W/U=(1/2)γ’D²/(1/2)Dh₁γ

=γ’D/h₁γ…①

n>1としてクイックサンドに対する安全率Fs

Fs=n(Gs-1)/(1+e)×(D/H)…②

クイックサンドが起こる限界動水傾度iは、①の式においてFs=1とした場合

限界動水傾度i=h₁/D=(Gs-1)/(1+e)…③

矢板の下流側の表面に透水性の押さえ盛土(単位面積あたりの重量w)とした場合

Fs=【n(Gs-1)/(1+e)×γD+w】/(γH)…④

 

水平方向

水平方向のパイピングは、不透水性の基礎地盤の上に均等な土からなるアースダムを築造するような場合に、その下流側斜面先付近などに見られます。

これは堤体や基礎地盤の表面付近で流線が集中している(流線の間隔が狭くなっている)部分では、浸透水の流速が速くなり土中の細かい粒子が流失します。

そうすると、この部分の土は間隔が多くなり水を通しやすくなるので、この部分にさらに流線が集中し、小トンネル状の空洞が堤体や基礎地盤の内部に向かって発達するのが水平方向のパイピングの仕組みです。

パイピングによって生じた空洞のなかでは、浸透水は自由に流下できるので、パイピングの進行に伴って動水傾度は大きくなり、これにともなって浸透水の流速が増して、堤体や基礎地盤が決壊してしまいます。

しかし、このような水平方向のパイピング発生の機構は、今のところ十分な理論を解明されるまでには至っていないのが現状です。

 

たとえば、細かい土粒子から成る土が、直接、暗渠のような集水設備に接していたり、アースダムの下流側斜面先にロックフィルの部分があるような場合には、動水傾度がとても大きくなり、集水設備やロックフィルの中に流入する水の速度が大きいため、土中の細かい粒子は水と共に移動します。

このような水平方向のパイピングを防止するには、基礎地盤や堤体内の細かい土粒子が浸透流によって流失しないように、浸透流が細かい土砂から成る層から粗粒の土層へ流入する部分の境界に、フィルター層を設けることが必要です。

これは細・粗の土層の境界にフィルター層を設けることによって、地盤の安全を保ち、しかも十分な透水性をもつためのフィルター層の材料は次のような粒度のものを選ぶ必要があります。

D₁₅f/D₁₅b=12~40 D₁₅f:フィルター層の材料の15%粒径

D₁₅b:地盤の土の15%の粒径

D₅₀f/D₅₀b=12~58 D₅₀f:フィルター層の材料の50%粒径

D₅₀b:地盤の土の50%の粒径

また盲下水や集水ロックフィルなどの材料と地盤との粒度の差が著しいときは、フィルター層の粒度を層状に変化させるなどの対策が効果的です。

地盤のフィルター第1層、第1層と第2層、第2層と第3層などの材料の粒度がそれぞれ、上記の式の関係を満足するように選定しましょう。

 

そのほか、パイピングを防ぐためには以下の方法があります。

  • ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
  • 地盤改良により地下水の回り込みを防止する
  • 事前調査により、水みちになりやすい箇所かどうか確認する

 

パイピングとクイックサンド現象とは?土木で使う安全率計算もサクッと解説まとめ

パイピングとは、浸透水によって構造物が浸食されたり、膨れ上がったりして破壊する現象のこと

クイックサンド現象とは、土中における浸透水の鉛直方向の水圧が大きい時に、その点より上方にある土を押し上げるため、土の表面が上方に膨れ上がり、ついには土砂が水と共に噴出して、基礎地盤を破壊する現象

鉛直方向パイピング計算式 定義
浸透水の圧力u=(1/2)γH u:浸透水の圧力

γ:水の単位体積重量

H:水頭差

D/2だけの幅の土柱の受ける平均過剰間隙水圧がh₁

U:揚力

i:限界動水傾度(臨界動水傾度)

w:矢板の下流側の表面に透水性の押さえ盛土(単位面積あたりの重量)

Gs:土粒子の比重

e:間隙比

揚力U=(1/2)Dh₁γ
安全率Fs=W/U=(1/2)γ’D²/(1/2)Dh₁γ

=γ’D/h₁γ…①

n>1としてクイックサンドに対する安全率Fs

Fs=n(Gs-1)/(1+e)×(D/H)…②

クイックサンドが起こる限界動水傾度iは、①の式においてFs=1とした場合

限界動水傾度i=h₁/D=(Gs-1)/(1+e)…③

矢板の下流側の表面に透水性の押さえ盛土(単位面積あたりの重量w)とした場合

Fs=【n(Gs-1)/(1+e)×γD+w】/(γH)…④

水平方向のパイピングは、不透水性の基礎地盤の上に均等な土からなるアースダムを築造するような場合に、その下流側斜面先付近などに見られる

パイピング防止対策

  • ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
  • 地盤改良により地下水の回り込みを防止する
  • 事前調査により、水みちになりやすい箇所かどうか確認する

以上です。

ありがとうございました。

 

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