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地すべりとは?簡単に原因や対策を地すべり地形の図解で解説

地すべり(原因×対策)
こんにちは、土木学士ちゃんさとです

今回のテーマは【地すべり】

土質工学を勉強してきた私が、「地すべり」とは何ぞや?と、わかりやすく簡単に解説していきます。

さらに原因や対策も地すべり地形の図解でまとめています。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ!

 

地すべりとは?簡単に原因や対策を地すべり地形の図解で解説

地すべりの定義を簡単に!地すべり地形の特徴

地すべりとは、山地や丘陵などの自然斜面の一部が、重力の作用によって低い場所に向かって運動する地質学現象です。

自然斜面における斜面崩壊の種類は、

  1. 地すべり
  2. 山崩れ

の2つに分けられます。

地すべりと山崩れの違いはこんな感じです。

地すべり 山崩れ
自然の土の斜面が、重力の作用によって比較的ゆるやかにゆっくりと、しかも継続的に低所に向かって移動する現象

自然斜面において、かなり広い範囲で起こる可能性がある

規模が小さい

地すべりに比べすべりの速度が速く、ほとんど瞬間的に起こる

この2つの違いは、その規模の大小が関係していると言えます。

 

また、地すべりの特徴をみていきましょう。

地すべり地形の簡単な概念図(縦断図)は以下のとおり。

地すべり概念図

地すべりの特性

  1. 地形図の等高線が不規則な配列を示す。(地すべりの上端付近には等高線の密な滑落崖があり、その下には局部的に膨張した地形が見られる)
  2. 地すべりの先端付近は隆起し、その全面は急斜面を形成している
  3. 地すべりの頭部(滑落崖に沿う部分)は沈下し、この部分には多くの池や沼、湿地帯などが見られる
  4. 地すべりの傾斜は比較的ゆるやかで、角度5°~20°くらいが多い
  5. 幅50~100m、奥行き100~500m程度の規模の地すべりが多い

上記の特性は、地すべりを起こす土の性質によって定まるものと言えるでしょう。

また小難しく(笑)、地質学的にいえば、

地殻変動の結果で生じた陸地の斜面が浸食を受け始めた初期、いわゆる幼年期の状態から、そのまま浸食の進んだ壮年期にかけての過程において【地すべり】が発生しやすいです。

斜面崩壊については別記事で地すべりとの違いを解説していますので併せてご確認ください。

 

地すべりの主な原因とは?

つづいては【地すべり】の原因について解説していきます。

主な原因は以下のとおり。

地すべりの原因

  1. 土質・地質的な問題(風化によって粘土が生成されやすく、この粘土層に地下水が供給されるような場合)
  2. 降雨や融雪などによる地下水の増加
  3. 河川による浸食
  4. 地震・火山爆発などの振動
  5. 掘削、盛土、貯水などの人為的作用
  6. ダムの築造における湛水や、貯水池の水位急降下

地質的には、風化によって粘土が生成されやすく、且つ、この粘土層に地下水が供給されるような場合に多く発生すると言えます。

例えば、四国や近畿地方南部の太平洋側地域は、地質構造帯に沿って分布した破砕帯による地すべりです。

そのほか、温泉地帯や火山地帯では岩石が化学的風化を受けて、温泉余土という粘土分が生成されるため、地すべりが生じることもあります。

 

とくに地すべりの発生に最も影響があると考えられるのは「地下水」です。

地下水の増加によって、すべり面の土強度が低下し、間隙水圧が増加するために、地すべり土塊の平衡が破れて【地すべり】が起こります。

降雨の数日後や、春先の融雪期に地すべりが頻発するのはこれが理由!

また、地すべり地の地表に河川、池沼、あるいは水田などがあると、それらの水源から浸透によって地下水が増加して、地すべりが誘発されることもあるので注意が必要です。

さらに地表にある河川は、単に地下水が増加する原因となるばかりでなく、水流により地すべりの「し部」が浸食されて、地すべりの原因になります。

同じようなことは、海岸や湖岸の潮、波浪による浸食によっても起こります。

 

一方で、地震や火山爆発のときには、その震動によって地盤がゆるみ、それが理由で地すべりが継続して発生します。

また土木工事における切土・盛土などによって、傾斜した地盤の平衡が破れたことが原因で、地すべりが発生した例も少なくありません。

そのほか、ダムを築造して湛水試験を行ったり、貯水池の水位が急降下したことなどが理由で、池内に地すべりが発生した事例もあります。

 

地すべりの対策とは?

地すべり現場

一般的な地すべりの対策方法はこんな感じ 🙂

地すべり対策

  1. 地表の斜面に被覆工や排水工を行って、地下水の地下への浸透を防ぐ方法
  2. 地下に横ボーリング、排水トンネル、集水井、排水暗渠などを設けて地下水を排除し、地すべり土塊の抵抗力を増して且つ、地すべり力を弱めて均衡を保たせる方法
  3. 大口径鋼管杭を地すべりの軸方向に直角をなすような列状に打ち込み、すべりに対する抵抗を増大させる方法
  4. 地すべり土塊の頂部に近い部分、または地すべり土塊全部を除去して安定させる方法
  5. 地すべり土塊の末端部に押さえ盛土を行って平衡を保つ方法
  6. 地すべりの末端部を流れる河川の護岸、水制、床固め工などを行い、浸食を防止する方法
  7. 地盤改良を行い、地盤を強固にする方法

地表の斜面に被覆工や排水工を行って、地下水の地下への浸透を防ぐ方法

地すべり地の周辺や斜面内に張石、コンクリート、張芝(植生工)などの排水路を設けます。

地表水を地すべり地以外に排除することが目的です。

 

地下に横ボーリング、排水トンネル、集水井、排水暗渠などを設けて地下水を排除し、地すべり土塊の抵抗力を増して且つ、地すべり力を弱めて均衡を保たせる方法

排水トンネルや集水井は、地すべり地の基盤の上や基盤内のように深い位置にある地下水を排除するのに有効です。

トンネルや井戸の内部からさらに集水のためのボーリングを行います。

地下水が浅い時には、地中に暗渠を埋設するのが一般的です。

法面排水の工法や注意点も併せて確認しておくと良いでしょう。

 

大口径鋼管杭を地すべりの軸方向に直角をなすような列状に打ち込み、すべりに対する抵抗を増大させる方法

杭打ちによる対策工法(基礎工法)は、ボーリング技術が発達したため、広く使用されるようになりました。

ただし鋼杭は、せん断に対しては強いですが、曲げに対する抵抗力は小さいので注意してください。

 

地すべり土塊の頂部に近い部分、または地すべり土塊全部を除去して安定させる方法

地すべりの土塊を除去する方法は、最も確実でその効果を算定できる利点があります。

しかし工費がかなり高くなるので、一般的には土塊の一部を除去する方法が多く採用されています。

 

地すべり土塊の末端部に押さえ盛土を行って平衡を保つ方法

土地が広く使用できる際には、押さえ盛土などによって、地すべり対策ができます。

 

地すべりの末端部を流れる河川の護岸、水制、床固め工などを行い、浸食を防止する方法

護岸や水制、床固め工なども浸食を防止するのに有効な手段です。

法面保護工法についてもチェックしてみてください。

 

地盤改良を行い、地盤を強固にする方法

地質調査などで地質的に弱い地盤(軟弱地盤)だとすれば、石灰やセメントを混ぜるなどして地盤を強固にする地盤改良が実施されます。

軟弱地盤工法も種類がたくさんあり、地形や現場状況によって工法が異なります。

 

地すべりの調査や観測方法とは?

地すべりの調査は、地形・地下水・植生などの調査の他、移動量やすべり面位置の特定のために、

  1. 伸縮計
  2. 傾斜計
  3. パイプひずみ計

などを用いて継続した観測を行います。

伸縮計

伸縮計は地すべり上と不動地点上に杭を打ち、両方の杭間に張ったインバー線の伸びを自動記録させるものです。

傾斜計

傾斜計は地表に設置して地すべり変動に伴う地表面の傾斜変動を定期的に測定します。

また鉛直なボーリング孔に地盤の動きに追従して変形する可とう管を設置し、地上より傾斜計を可とう管に挿入して各深さごとの傾斜量を測定します。

 

パイプひずみ計

パイプひずみ計は不可さ1~2m間隔でストレインゲージを張り付けた塩化ビニル管をボーリング孔内に埋設し、管の曲げひずみを測定してすべり面の位置を推定します。

 

 

自然に発生する地すべりや山崩れは、その性質がとても複雑で、理論的に解明することは難しいと言われています。

それは自然の堆積土の力学的な強さが一定ではなく、かつ、これに加わる外力もたくさんあるからです。

ただし、地すべりや山崩れを起こす斜面は力学的にとても不安定なことは間違いないです。

豪雨や地震など、何らかの原因によって土中の応力が増大したり、力学的強さが減少すると、地すべりや山崩れの可能性が高くなると言えるでしょう。

地すべりとは?簡単に原因や対策を地すべり地形の図解で解説まとめ

地すべりとは、山地や丘陵などの自然斜面の一部が、重力の作用によって低い場所に向かって運動する地質学現象

地すべり概念図

地すべりの特性

  1. 地形図の等高線が不規則な配列を示す。(地すべりの上端付近には等高線の密な滑落崖があり、その下には局部的に膨張した地形が見られる)
  2. 地すべりの先端付近は隆起し、その全面は急斜面を形成している
  3. 地すべりの頭部(滑落崖に沿う部分)は沈下し、この部分には多くの池や沼、湿地帯などが見られる
  4. 地すべりの傾斜は比較的ゆるやかで、角度5°~20°くらいが多い
  5. 幅50~100m、奥行き100~500m程度の規模の地すべりが多い

地すべりの原因

  1. 土質・地質的な問題(風化によって粘土が生成されやすく、この粘土層に地下水が供給されるような場合)
  2. 降雨や融雪などによる地下水の増加
  3. 河川による浸食
  4. 地震・火山爆発などの振動
  5. 掘削、盛土、貯水などの人為的作用
  6. ダムの築造における湛水や、貯水池の水位急降下

地すべり対策

  1. 地表の斜面に被覆工や排水工を行って、地下水の地下への浸透を防ぐ方法
  2. 地下に横ボーリング、排水トンネル、集水井、排水暗渠などを設けて地下水を排除し、地すべり土塊の抵抗力を増して且つ、地すべり力を弱めて均衡を保たせる方法
  3. 大口径鋼管杭を地すべりの軸方向に直角をなすような列状に打ち込み、すべりに対する抵抗を増大させる方法
  4. 地すべり土塊の頂部に近い部分、または地すべり土塊全部を除去して安定させる方法
  5. 地すべり土塊の末端部に押さえ盛土を行って平衡を保つ方法
  6. 地すべりの末端部を流れる河川の護岸、水制、床固め工などを行い、浸食を防止する方法
  7. 地盤改良を行い、地盤を強固にする方法

以上です。

ありがとうございました。

 

この記事を書いた人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員(土木職)の土木ブロガー💻
  • 国立大学★土木工学科卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の地方公務員(土木職)に合格!7年間はたらいた経験をもつ
  • 現場監督・施工管理の経験あり
  • 1級土木施工管理技士・危険物取扱者(乙)・玉掛け等の資格もち
  • ブログで土木施工管理技士の勉強方法や土木知識をメインに情報を発信
  • 書籍【土木技術者のための土木施工管理の基礎】好評発売中!

 

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