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盤ぶくれやボイリング・ヒービングの違い&対策は?パイピングとの違いも解説

ヒービング・ボイリング・盤ぶくれの現象や対策まとめ

こんにちは、土木学士ちゃんさとです。

 

ヒービング、ボイリング、盤ぶくれ…パイピング??名前が似ていてちがいがよくわからないんだよね…
わかる!覚えてもすぐに忘れてこんがらがっちゃうのよね~

こんなお悩みありませんか?

 

ヒービングやボイリングは土留め工のときに起こる地盤現象ですが、名前が似ているためこんがらがって、ちがいを覚えるのが大変ですよね。

そこで、土留め工の地盤現象についてわかりやすくまとめました。

現場の土留め工や、試験問題(土木施工管理技士)などの参考になればうれしいです。

 

この記事を書いている人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員の土木ブロガー💻
  • 国立大学★土木工学科卒業
  • 某県庁の公務員土木職として7年間はたらいた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • 1級土木施工管理技士、危険物取扱者乙4、玉掛などの資格もちです。
  • 今はブログで土木施工管理技士や公務員のあれこれ、仕事などをメインにさまざまな情報発信をしています。

それではさっそく参りましょう、ラインナップはこちらです。  

 

盤ぶくれやボイリング・ヒービングの違い&対策は?パイピングとの違いも解説

それぞれの現象をみていきましょう。

ヒービングが起こる地盤状態

ヒービングの土の状態(粘性土・砂質土)

 

  • 掘削する底面付近にやわらかい粘性土があるとき
  • 軟弱地盤などの塑性指数や含水比の高い土があるとき

塑性(そせい)とは、物体に力を加えると変形し、力を取り除いても元の形に戻らず変形が残る現象のことです。

そして塑性指数とは、液性限界と塑性限界の差のことで、土が塑性を示す幅を表しています。

Ip=Wl-Wp(塑性指数=液性限界ー塑性限界)

  • 液性限界とは、土が塑性体から液体に移るときの境界の含水比
  • 塑性限界とは、土が塑性体から半固体に移るときの含水比
塑性指数が大きくなると、含水比も大きくなるよ

 

ヒービング現象とは?

ヒービング現象

ヒービングとは、土留め背面の土の重量や地表面荷重などにより、すべり面が生じる現象です。

そのほか、土留壁が押し出され、掘削底面の隆起や周辺地盤の沈下が起こります。

 

ヒービング対策

ヒービングを防ぐためには以下の方法があります。

  • 土留め壁の根入れ長を長くしたり、矢板の板厚を増やしたりする(剛性を増す)
  • 掘削底面下を地盤改良して、土のせん断強さを増やす
  • 土留壁の背面地盤を切り下げて(盤下げ)ヒービングを減少させる  

 

ボイリングの地盤状態

ボイリングの土の状態(砂質土・粘性土)

  • 地下水位の高い砂質土の場合
  • 土留め付近に河川、海など地下水の供給源があるとき
ボイリングは砂質土、ヒービングは粘性土と覚えるといいよ

 

ボイリング現象とは?

ボイリングの現象

ボイリングとは、土留め前面と背面の水位差により上向きの浸透流が生じ、掘削底面が沸騰したように湧き上がる現象のことです。

底面の土がせん断抵抗を失い、土留めの安定性が損なわれます。

液状化現象とも関連の深い現象です。

 

ボイリング対策

ボイリングを防ぐためには以下の方法があります。

  • 土留壁の根入れをながくする
  •  ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
  • 地盤改良により地下水の回り込みを防止する  

ウェルポイント工法とディープウェル工法は、軟弱地盤中の水を排除する「地下水位低下工法」です。

ディープウェル工法は井戸方式、ウェルポイントは排水管方式です。

地盤の圧密を促進するもので、脱水工法とも呼ばれます。

 

盤ぶくれの地盤状態

盤ぶくれの土の状態(粘性土・透水性のよい砂質土)

掘削底面付近が難透水層で、水頭の高い透水層の順で構成されている場合、盤ぶくれは起きやすいです。

難透水層には粘性土だけでなく、細粒分の多い砂質土も含まれます。

 

盤ぶくれ現象とは?

盤ぶくれの現象

盤ぶくれとは、難透水層下面に上向きの水圧が作用し、土の重さ以上になると掘削底面が浮き上がる現象です。

最終的に難透水層が突き破られると、ボイリングと同じ状態になります。

 

盤ぶくれ対策

盤ぶくれを防ぐためには以下の方法があります。

  • 土留壁の根入れを十分な安全率を確保できる難透水層まで伸ばす
  • ディープウェルなどで被圧層の地下水位を低下させる
  • 地盤改良法で入江などをつくり、透水層を造成する  

 

パイピングの地盤状態

パイピングの土の状態

ボイリングや盤ぶくれと同じ地盤(砂質土多め)で、水みちができやすい状態のとき、パイピングは起こりやすくなります。

水みちとは地盤のなかで水が通りやすくなっている部分のこと!

杭の引き抜きあとやボーリング調査後、さらにはすでに打設した杭のまわりなどで水みちがつくられやすいです。

 

パイピング現象とは?

パイピング現象

パイピングとは地盤のよわい箇所の土粒子が洗い流され、水みちがつくられ拡大してしまう現象です。

最終的にはボイリングと同じ状態になります。

 

パイピング対策

パイピングを防ぐためには以下の方法があります。

  • ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
  • 地盤改良により地下水の回り込みを防止する
  • 事前調査により、水みちになりやすい箇所かどうか確認する

 

またパイピングにはクイックサンド現象というものが生じます。

その内容については別記事でご確認ください。

 

ボイリング・盤ぶくれ・パイピングとのちがい

ボイリングと盤ぶくれとパイピングのちがい

ボイリング現象のなかに、盤ぶくれやパイピングが含まれるとイメージすると良いです。

ボイリング、盤ぶくれ、パイピングは、地下水が高い砂質土の場合起こります。

地盤の状態はおなじです!

 

そしてさらに、盤ぶくれは難透水層がある場合、 パイピングは水みちがつくられやすい(杭などがある)地盤の場合 という条件が加わった状態です。

ポイントキーワードは【難透水層】と【水みち】です。

盤ぶくれは【難透水層】、パイピングは【水みち】がポイントになります。

 

また、以下の表は、土留めを行う上での具体的な基準や指標となるものです。 参考にしてください。

根入れ 杭の場合は1.5m、鋼矢板の場合は3.0mを下回ってはならない
親杭横矢板 土留め杭の最小部材はH300、土留め板の最小厚は3cm以上
鋼矢板 重要な仮設工事に用いる鋼矢板はⅢ型以上を標準とする
腹起し
  • 最小部材はH300
  • 継手間隔は6m以上
  • 垂直間隔は3m程度
  • 第1段の腹起しは土留杭または鋼矢板のなどの頂部から1m以内に設置すること
切ばり
  • 最小部材はH300
  • 水平間隔は5m以下
  • 垂直間隔は3m程度

(引用:建設工事公衆災害防止対策要綱ー土木工事編 第6章 土留め工)  

 

 

盤ぶくれやボイリング・ヒービングの違い&対策は?パイピングとの違いも解説まとめ

掘削底面の破壊現象
分類と現象 地盤の状態 現象 対策

ヒービング

土留め背面の土の重量や地表面荷重などにより、すべり面が生じる現象

ヒービングの土の状態(粘性土・砂質土)

粘性土

ヒービング現象

ポイント☝

粘性土・すべり面・隆起

土留め壁の根入れ長を長くしたり、矢板の板厚を増やしたりする(剛性を増す)

掘削底面下を地盤改良して、土のせん断強さを増やす

土留壁の背面地盤を切り下げて(盤下げ)ヒービングを減少させる  

ボイリング

土留め前面と背面の水位差により上向きの浸透流が生じ、掘削底面が沸騰したように湧き上がる現象

ボイリングの土の状態(砂質土・粘性土)

地下水位の高い砂質土

ボイリングの現象

ポイント☝

砂質土・浸透流・湧きだし

土留壁の根入れをながくする

 ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる

地盤改良により地下水の回り込みを防止する  

盤ぶくれ

難透水層下面に上向きの水圧が作用し、土の重さ以上になると掘削底面が浮き上がる現象

盤ぶくれの土の状態(粘性土・透水性のよい砂質土)

地下水位の高い砂質土

(透水性よい)

盤ぶくれの現象

ポイント☝

難透水層

土留壁の根入れを十分な安全率を確保できる難透水層まで伸ばす

ディープウェルなどで被圧層の地下水位を低下させる

地盤改良法で入江などをつくり、透水層を造成する  

パイピング

地盤のよわい箇所の土粒子が洗い流され、水みちがつくられ拡大してしまう現象

パイピングの土の状態

地下水位の高い砂質土

(透水性よい)

パイピング現象

ポイント☝

水みち

ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる

地盤改良により地下水の回り込みを防止する

事前調査により、水みちになりやすい箇所かどうか確認する

 

 

今回は以上です。

参考になればうれしいです。

ありがとうございました。

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