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法面排水の工法や注意点★パイプや排水工法(地下水対策)も解説

法面排水(工法×選定×排水材)

こんにちは、土木学士ちゃんさとです。

 

今回の記事内容は【法面排水の工法や注意点】です。

法面の排水について、

  1. 法面排水の注意点(盛土&切土)
  2. 法面排水材の種類と特徴
  3. 排水工法の種類(地下水対策)
  4. 排水工法の選定(地下水対策)

などをまとめましたので参考にしてください。

 

この記事を書いた人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員(土木)の土木ブロガー💻
  • 国立大学★土木工学科卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の地方公務員(土木)に合格!7年間はたらいた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • 転職活動経験アリ(現在フリーランス)
  • 1級土木施工管理技士、玉掛け、危険物取扱者乙4などの資格もち
  • 今はブログで土木、土木施工管理技士の勉強方法や公務員のあれこれ、仕事をメインにさまざまな情報を発信中!

それではさっそく参りましょう、ラインナップはこちら 🙂

 

法面排水の施工上の注意点(盛土&切土)

盛土や切土を行う場合、法面の安定を図るため、しっかり法面排水の処理を行う必要があります。

盛土の法面排水

盛土において、法面排水の注意点は以下のとおりです。

法面排水(盛土)施工上の注意点

  1. 雨水浸透による盛土の軟弱化を防ぐため、盛土面には4~5%程度の勾配を保つように敷き均しながら施工する。
  2. 施工中に降雨が予想されるときには転圧機械、土運搬機械のわだちのあとが残らないように、作業終了時にローラなどで表面をなめらかにし、雨水の土中への侵入を防ぐ。
  3. 降雨前に敷きならした土を転圧せずに放置しないこと。
  4. 高盛土(5m以上)の法面が表面水によって洗堀崩壊する恐れのある場合で盛土表面の幅が広い時は、降雨前にグレーダなどでのり肩側溝を設けて、法面への雨水が流下するのを防止する。
  5. 粘性土の盛土材料は、いちど高含水比になると含水比を低下させることがむずかしいため、施工時の排水を十分に行い、施工機械のトラフィカビリティを確保する
  6. 砂または砂質土で盛土を行う場合は、盛土表面から雨水を浸透しやすいため、ビニルシートなどで法面を被覆して保護する
  7. 砂質土盛土はとくに、法肩や法面は十分に締め固める
  8. 切盛りの接続区間では、施工の途中で切土側から盛土側に雨水が流れ込むのを防ぐため、境界付近にトレンチ(排水溝)を設ける
  9. 法面の集排水設備や法面の保護は、なるべく早めに法面の仕上げを追いかけて施工する。

 

また、法面に使う盛土材料が高含水比の場合、土質改良が必要です。

水切り 盛土材料を仮置きし、多くの溝などを設けることにより、土中の水の排水を図る
曝気乾燥 バックホウなどで表面をかき均し、できるだけ表面積を大きくして空中に曝気する

太陽や風などによる水分の蒸発を図って含水比を低下させる

安定処理 石灰系またはセメント系材料を用いて攪拌混合し締め固める

試験施工をおこなって、安定処理材の種類および配合を決定する

 

切土の法面排水

つづいては切土法面排水の注意点です。

法面排水(切土)施工上の注意点

  1. 降雨時における雨水の掘削箇所への流入を防止するため、周囲にトレンチなどを設けて、表面水の侵入を防ぐ
  2. 切土部における表面排水を考え、横断方向へ3%程度の勾配をとり、掘削両面側のトレンチに雨水を排水する
  3. 切土部において地下水位が高い場合、十分な深さのトレンチを設けて、土の含水を低下させる
  4. 切盛りの接続区間では、施工の途中で切土側から盛土側に雨水が流れ込むのを防ぐため、境界付近にトレンチ(排水溝)を設ける

 

いっぽう、切土法面の排水工の種類と目的はこんな感じです 🙂

排水工の種類 機能(目的)
表面排水工 法肩排水溝 法面への地山表面排水の流下を防止する
小段排水溝 法面の水を小段にあつめて縦排水溝に流す
縦排水溝 法面排水溝や小段排水溝からの水を法尻の水路に流す
地下排水工 地下排水溝 地表面近くの地下水や浸透水を集めて排水する
水平排水孔 法面内の湧水を法面の外へ排水する
垂直排水孔 法面内の地下水や浸透水を集水井で排水する

切土を行うときには、排水処理についてもしっかり検討しましょう。

 

法面排水対策で使う排水材(パイプ・シート・側溝)

法面の排水対策には、排水材などを使って効率的に排水する方法があります。

法面排水対策に使われる主な排水材はこちら

法面排水材の種類

  1. 排水パイプ(暗渠管)
  2. 排水シート
  3. 側溝

 

材質や特徴をかんたんにまとめるとこんな感じです 🙂

排水材の種類 材質 特徴
排水パイプ 塩ビ管

高密度ポリエチレン管

金属樹脂複合管

鋼製パイプ(ストレーナー加工)

のり面内部の排水に適している

主に暗渠管として使用

排水シート 長繊維不織布シート 排水機能、補強機能に優れており、 補強盛土工法に適する
側溝 コンクリート 表面排水に適している

 

 

排水工法の種類(地下水対策)

地下水が高い場合、施工前に地下水対策が必要な場合も出てくるでしょう。

地下水対策における排水工法は、大気圧下で水頭差により集水される地下水を排水する重力排水工法と、真空の力で地下水を吸い上げる強制排水工法の2つに分けられます。

法面排水工法の種類
重力排水工法

大気圧下で水頭差により集水される地下水を排水する

釜場排水工法
深井戸工法(ディープウェル工法)
強制排水工法

真空の力で地下水を吸い上げる

ウェルポイント工法
深井戸真空工法
電気浸透工法

さらに細かく分類された排水工法をくわしくみていきましょう。

 

釜場排水工法

釜場排水工法

釜場排水工法は、掘削時に浸透してくる水を、掘削面より深い位置に設置した釜場と呼ばれる集水マス(穴あきドラム缶など)にあつめて、水中ポンプで排水する工法です。

小規模掘削で湧水量が少ない場合に適しています。

 

深井戸工法(ディープウェル工法)

ディープウェル工法

径600mm程度の井戸用鋼管を、アースドリルなどの削孔機で地中深く掘り下げて設置し、井戸内に流入した水中ポンプで排水して井戸周辺の地下水位を低下させる工法です。

深井戸工法(ディープウェル工法)は、次のような場合に適しています。

  1. 広範囲に地下水位を低下させる場合
  2. 透水性が大きく、排水量が多い場合

 

ウェルポイント工法

ウェルポイント工法

掘削の内側や周辺をウェルポイントと呼ぶ給水装置で取り囲み、先端の吸水部から地下水を真空ポンプで強制的に排水し、地下水位を低下させる方法です。

ウェルポイント工法の特徴や留意点は以下のとおり 🙂

ウェルポイント工法の特徴や留意点

  1. 比較的浅く、広い範囲の地下水位を低下させる場合に有効である
  2. 透水係数の小さい土質にも適用できるが、細粒分を多く含む土には適さない
  3. 揚水高さは大気圧相当の約10mあるが、機会損失等により実用上は7m程度が限度
  4. 掘削が大きくなる場合は、多段式のウェルポイントが必要になる
  5. 砂礫層の場合は、井戸の掘削がむずかしく、排水量が多い場合は適用できない

 

深井戸真空工法

深井戸真空工法

深井戸真空工法は、ストレーナーの付いた鋼管を地盤内に打設して井戸をつくり、内部に何段かのポンプを取り付け、真空揚水する工法です。

井戸周囲のフィルターとなる砂柱の上端を粘土で詰めて、真空状態を作り出します。

また深井戸真空工法は、内部に複数段のポンプを設置するため、10m以上の深度からも揚水できるのが特徴です。

 

きほん、ウェルポイントと同じ原理の工法と言えますね。

排水量が多いときに適用されます 😀

 

 

電気浸透工法

電気浸透工法とは、地中に直流を流すとき、間げき水(電子)が陰極に向かって移動するのを利用して排水する工法。

原理を図解するとこんな感じです。

電気浸透工法の原理

 

 

 

排水工法の選定方法(地下水対策)

法面排水工法と土質の関係

排水工法の選定は経済性のほか、土の透水性(土質)からも判断できます。

上記の表に、土質と排水工法の適用範囲を示しました。

また、排水工法と透水係数の関係は以下のとおりです。

排水工法 透水係数 土質
水中掘削 極めて大きい場合 レキ
重力排水 10⁻³cm/secより大きい層に適用 レキ~砂
真空排水 10⁻²~10⁻⁵cm/sec程度に適用 砂~シルト
電気浸透 10⁻⁵cm/secより小さい場合に適用 シルト~粘土

選定するうえでの、ひとつの参考値としてお使いください。

 

 

 

まとめ

法面排水★施工時の注意点

盛土排水の注意点 切土排水の注意点
  1. 雨水浸透による盛土の軟弱化を防ぐため、盛土面には4~5%程度の勾配を保つように敷き均しながら施工する。
  2. 施工中に降雨が予想されるときには転圧機械、土運搬機械のわだちのあとが残らないように、作業終了時にローラなどで表面をなめらかにし、雨水の土中への侵入を防ぐ。
  3. 降雨前に敷きならした土を転圧せずに放置しないこと。
  4. 高盛土(5m以上)の法面が表面水によって洗堀崩壊する恐れのある場合で盛土表面の幅が広い時は、降雨前にグレーダなどでのり肩側溝を設けて、法面への雨水が流下するのを防止する。
  5. 粘性土の盛土材料は、いちど高含水比になると含水比を低下させることがむずかしいため、施工時の排水を十分に行い、施工機械のトラフィカビリティを確保する
  6. 砂または砂質土で盛土を行う場合は、盛土表面から雨水を浸透しやすいため、ビニルシートなどで法面を被覆して保護する
  7. 砂質土盛土はとくに、法肩や法面は十分に締め固める
  8. 切盛りの接続区間では、施工の途中で切土側から盛土側に雨水が流れ込むのを防ぐため、境界付近にトレンチ(排水溝)を設ける
  9. 法面の集排水設備や法面の保護は、なるべく早めに法面の仕上げを追いかけて施工する。
  1. 降雨時における雨水の掘削箇所への流入を防止するため、周囲にトレンチなどを設けて、表面水の侵入を防ぐ
  2. 切土部における表面排水を考え、横断方向へ3%程度の勾配をとり、掘削両面側のトレンチに雨水を排水する
  3. 切土部において地下水位が高い場合、十分な深さのトレンチを設けて、土の含水を低下させる
  4. 切盛りの接続区間では、施工の途中で切土側から盛土側に雨水が流れ込むのを防ぐため、境界付近にトレンチ(排水溝)を設ける

排水材の種類や特徴

排水材の種類 材質 特徴
排水パイプ 高密度ポリエチレン管

金属樹脂複合管

鋼製パイプ(ストレーナー加工)

のり面内部の排水に適している

主に暗渠管として使用

排水シート 長繊維不織布シート 排水機能、補強機能に優れており、 補強盛土工法に適する
側溝 コンクリート 表面排水に適している

 

排水工法(地下水対策)の種類と特徴

法面排水工法の種類と特徴

重力排水工法

大気圧下で水頭差により集水される地下水を排水する

釜場排水工法

掘削時に浸透してくる水を、掘削面より深い位置に設置した釜場と呼ばれる集水マス(穴あきドラム缶など)にあつめて、水中ポンプで排水する工法

釜場排水工法
深井戸工法(ディープウェル工法)

径600mm程度の井戸用鋼管を、アースドリルなどの削孔機で地中深く掘り下げて設置し、井戸内に流入した水中ポンプで排水して井戸周辺の地下水位を低下させる工法

ディープウェル工法
強制排水工法

真空の力で地下水を吸い上げる

ウェルポイント工法

掘削の内側や周辺をウェルポイントと呼ぶ給水装置で取り囲み、先端の吸水部から地下水を真空ポンプで強制的に排水し、地下水位を低下させる方法

ウェルポイント工法
深井戸真空工法

ストレーナーの付いた鋼管を地盤内に打設して井戸をつくり、内部に何段かのポンプを取り付け、真空揚水する工法

深井戸真空工法
電気浸透工法

地中に直流を流すとき、間げき水(電子)が陰極に向かって移動するのを利用して排水する工法

電気浸透工法の原理

排水工法(地下水対策)の適用範囲(土質)

排水工法 透水係数 土質
水中掘削 極めて大きい場合 レキ
重力排水 10⁻³cm/secより大きい層に適用 レキ~砂
真空排水 10⁻²~10⁻⁵cm/sec程度に適用 砂~シルト
電気浸透 10⁻⁵cm/secより小さい場合に適用 シルト~粘土

 

以上です。

また、法面関連だと以下の記事がおすすめです。

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  2. 法面保護工の種類&工法まとめ★かんたん解説
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興味ある方はぜひよんでみてくださいね 🙂

ありがとうございました。

 

 

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