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パスポイント&タイポイントとは?空中写真測量の手順や作業工程

空中写真測量

空中写真測量の作業工程や用語、手順についてまとめました。

パスポイントやタイポイントなど、専門的な内容なので、ぜひじっくり確認してみてください。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ 🙂

 

パスポイント&タイポイントとは?空中写真測量の手順や作業工程

空中写真測量は、飛行機などにより上空から撮影された連続する空中写真を用いて、数値地形図を作成する作業です。

カメラはフィルム航空カメラやデジタル航空カメラなどがあります。

また空中写真から地形図を作成する原理は以下のとおりです。

空中写真の原理

  1. 重複する2枚の空中写真を用いて撮影時の状態を再現
  2. 空間的な位置関係を合わせて、対象地域のステレオモデルを作成
  3. ステレオモデルと実際の地形との整合性を取ることにより、縮尺や空間位置(方位や座標)を決定
  4. 整合性の取れたモデルから平面図化し、地形図を作成

また作業工程のながれは以下のとおりです。

空中写真測量の作業工程

  1. 作業計画
  2. 標定点の設置
  3. 対空標識の設置
  4. 撮影
  5. 同時調整
  6. 現地調査
  7. 数値図化
  8. 数値編集
  9. 補測編集
  10. 数値地形図データファイルの作成
  11. 品質評価
  12. 成果などの整理

一方、航空レーザ測量についてはまた別記事でご確認ください。

空中写真の特徴と実体視

空中写真測量ではフィルム空中写真とデジタル空中写真の使用が認められていますが、主にデジタル空中写真が主流で使用されています。

それぞれの特徴とちがいについてはこんな感じです。

デジタル空中写真 フィルム空中写真
空中写真の主点

写真上で計測を行う場合や図化機に写真をセットする場合に用いられる

写真の四隅を指標とするため、指標を結んだ対角線の交点が主点となる 四隅の指標を結んだ線あるいは四辺の各中央にある指標を結んだ線(破線)の交点で求められる
空中写真の形状 長方形

その短辺が飛行機の進行方向となっている

正方形

また空中写真には測定上、大切な意味をもつ3つの点が存在し、これらをまとめて特殊3点と呼んでいます。

主点 空中写真面の中心点

四隅や中央部にある指標を結ぶことにより求められる

レンズ中心を通る光軸と写真面の交点

等角点 主点とレンズ中心を結ぶ線(光軸)とレンズ中心を通る鉛直線の交角を2等分した線と空中写真面の交点
鉛直点 レンズ中心を通る鉛直線と空中写真面の交点

建物や土地の起伏によるずれ(ひずみ)は鉛直点を中心に放射状に起きる

この特殊3点は鉛直空中写真の場合は一致し、斜め写真の場合は以下の図のようになり一致しません。

 

また一般に空中写真は、飛行機から鉛直方向にカメラの光軸を向けて撮影する「鉛直写真」と呼ばれるものです。

このため写真主点と鉛直店は一致しており、このような空中写真を【鉛直空中写真】とよびます。

 

一方、空中写真の実体視とは、2枚1組の連続した空中写真を用いて立体的に見る(ステレオモデルの作成)手法であり以下のように分類されます。

実体視 裸眼(肉眼)
実体鏡 簡易式実体鏡
反射式実体鏡
アナグリフ

一般に3Dメガネ(赤青)を使用して立体的に見せる技術

 

裸眼実体視

その名のとおり、裸眼(肉眼)で直接実体視を行う方法ですが、個人差が大きく人によっては見えない場合もあります。

この裸眼実体視の方法は、1組の写真について重複していて実体視を行う部分を約6cmほど離し、左目で左の部分、右目で右の部分を見るようにします。

また裸眼実体視は練習が必要な場合もあり、この時は簡単な図形を2つ用意し、両目の間隔に離し、遠くを見るようにして「より目」になるように見ましょう。

その際に中央部にもうひとつ同じ図形が現れるようになればOKです。

原理としては以下の図のように、同一鉛直線上にあるA,Bの2点を考えると撮影基準面に対して高さをもつA点のほうが2枚の写真上の距離が短くなることがわかります。

つまり、左右写真上の対応する2点間の長さを測り、その距離が一番短い点が最も高い点ということです。(逆は低い点)

裸体視

 

実体鏡による実体視

実体鏡は、凸レンズをもつ簡易式実体鏡と、さらに詳細な設定が可能となっている反射式実体鏡の2つがあります。

あらかじめ目の焦点距離に合わせられた左右のレンズ(目)で、左右の写真を見るようになるため、比較的実体視が行いやすいとされています。

 

 

空中写真測量の標定点と対空標識

標定とは、空中写真と地上点を対応させるために必要な基準点および水準点の総称であり、同時調整や数値図化において写真座標を測定する場合に用いられます。

流れは以下のとおりです。

①内部標定 投影機(図化機)に写真をセットする要素の決定作業

※要素:カメラのレンズ中心から写真までの距離など

⓶相互標定 ステレオモデル作成に必要な視差の修正作業

※視差:右目、左目で見た対象物のズレ

③絶対標定(対地標定) ステレオモデルを撮影したときの状態に復元する作業(モデルの縮尺と高さの決定)
④接続標定 連続した空中写真を順にステレオモデル化していく作業

ちなみに現在使用されているデジタル図化機によるバンドル法では、内部標定から同時調整を行うことにより、すべての標定作業が完了します。

標定点としては基準点や水準点などの明確な点が必要であり、できるだけ既知の基準点などを使いますが、十分な数が存在しない場合は新たに設置しなければなりません。

 

また対空標識とは、標定点が空中写真に明瞭に映り込むために設置する標識ですが、明瞭な構造物がある場合はこれを対空標識に代用できます。

対空標識の形状 A型 対空標識A型
B型 対空標識B型
C型 対空標識C型
D型 対空標識D型
E型 対空標識E型
地図情報レベル A・C型 B・E型 D型
500 20×10cm 20×20cm 内側30cm・外側70cm
1,000 30×10cm 30×30cm
2,500 40×10cm 45×45cm 内側50cm・外側100cm
5,000 90×3cm 90×90cm 内側100cm・外側200cm
10,000 150×50cm 150×150cm
厚さ 4~5mm

対空標識の形状はA型~E型まで定められていますが、基本形はA型とB型です。

E型は地上に設置できない場合の形状であり、建物の屋上などに設置する場合はA型、C型、D型を基本として直接ペンキで描くことができます。

また色は白がきほんですが、周囲の状況によっては黄色や黒を用いることができます。

ただし黒色にした場合は、空中写真上の画像が小さく映るため、既定のサイズより大きくし、材質は耐久性のある合板や化学合成板を使用しましょう。

 

一方で対空標識は、以下の場合に偏心して設置されます。

  • 物理的に設置できない場合
  • 土地所有者・管理者の許可が得られない場合
  • 上空視界が確保できない場合
  • 周囲の状況から明瞭に映らないと判断される場合
  • 道路上や住宅地内にあり交通などに支障を与える場合

対空標識を偏心して設置した場合は、偏心距離や偏心角を測定し、偏心計算を行う手順です。

そして撮影修了後は、空中写真上に対空標識が映り込んでいるかを拡大された写真上で確認する必要があり、明瞭に確認できない場合は、写真上の道路の角や明瞭な構造物に対して標定点測量を行います。

 

対空標識の設置に関する注意事項についてまとめましたのでご確認ください。

対空標識設置の注意点

  1. 空中写真撮影終了後、対空標識は速やかに撤去する
  2. デジタル航空カメラ(長方形)ではフィルム航空カメラ(正方形)より画角が小さくなるため注意が必要
  3. 空中写真上で判読しやすいように対空標識の設置点付近の見取り図作成し、地上写真を撮影する
  4. 対空標識の保全のため、公共測量・発注者・受注者・保存期限を明記する
  5. 偏心が必要な場合は偏心点に標杭を設置し、この周囲に対空標識を設置する
  6. 樹上に設置するE型では、空中写真の撮影時までに樹木などが標識を覆い隠さないよう、あらかじめ周囲より50cmほど高くなるように設置する
  7. 上空視界を確保し、明瞭に判別できるように周囲の状況に注意しながら、測定に考慮して周辺より若干高くなるように設置する
  8. 土地所有者または管理者の許可を得て設置する
  9. 空中写真撮影の終了まで、壊れないように堅固に設置する

一方で近年ではドローン(UAV)測量も増えています。

 

同時調整と現地調査

同時調整とは、デジタルステレオ図化機を用いて、空中三角測量によりパスポイント、タイポイント、標定点の写真座標を測定し、水平位置および標高を決定する作業のことです。

同時調整の調整計算にはバンドル法(解析法)が用いられます。

バンドル法は重複した写真上の共通する点を結びつけることにより、これらを1つのブロックとして調整する計算方法のことだよ

 

また空中写真測量における現地調査とは、人工地物や自然物、境界などの各種表現事項や名称などについて調査・確認し、後の数値図化作業や数値編集に必要な資料を作成する作業を指します。

空中写真から判読が困難なものに関して行う必要があります。

手順は以下のとおりです。

①予察 現地調査着手前に空中写真や参考資料などを用いて調査事項やその範囲、作業量などを把握するために行う作業

空中写真の判読困難な事項およびその範囲、判読不能な部分、撮影後の変化が予想される部分など、各資料の矛盾が主な予察事項

⓶現地調査の実施 予察の結果に基づき実施

【実施事項】

予察結果の確認、判読不能な事項、空中撮影後の変化状況など

③調査結果の整理 現地調査後すみやかに実施する

【調査結果の整理内容】

調査結果は地図情報レベルに対応する縮尺相当の空中写真などの上に脱落や誤記のないように整理する

調査事項は真形および真位置を明確に描示する

真位置への描示が困難な場合は他位置からの明瞭な表示を行う

地名および境界を整理する空中写真などは、他の調査事項に用いたものとことなるものを使用することができる

整理する空中写真亜h、現地調査に使用されたものと各コース1枚おきとする

 

空中写真測量におけるパスポイントとタイポイント

パスポイントとタイポイントの特徴はこんな感じです。

名称 定義 注意点
パスポイント

タイポイント

同一コースの隣接写真の連結に用いられる点

重なり合う部分の中央(主点付近)と両端に1点ずつ3点をえらぶ

連結する各写真上の座標が正確に測定できる地点に配置

主点付近および主点基線に直角で等距離の両方に計3点以上配置

a,b,cの各点に区分し、主点付近をb点、上をa点、下をc点とする

タイポイント

タイポイント

隣接コース間の接続に用いられる点

隣接コースと重複している部分で空中写真上で明瞭に認められる位置に選定する

ブロック調整においては1モデルに1点を標準とし、ほぼ等間隔に設置

パスポイントで兼ねることができる

コース間のひずみが調整できるように、タイポイントが一直線上に並ばないようにジクザクに配置する

 

ブロック調整

空中写真測量では、ひとつの区域を一直線状に写真を重複させながら撮影します。

これをコースと呼びますが、必要な区域が広く1つのコースでは撮影できない場合、複数のコースに分けて隣接コースを重複しながら撮影します。

この複数コースにわたって同時に調整を行う行為が【ブロック調整】と呼ばれるものです。

複数コースにわたって対象区域が撮影されている場合は、必要な基準点が少なくて済むことや、互いのコースが同程度の精度で撮影されるため、同時調整ではバンドル法によりブロック調整が行われます。

 

デジタルステレオ図化機の特徴

デジタルステレオ図化機とは数値図化データを画面上で確認する作業のこと。

構成はソフトウェア、コンピュータ、ステレオ視装置、ディスプレイ、三次元マウス、XYハンドル、Z盤などです。

またデジタルステレオ図化機を用いることにより、数値地形モデル(DTM)を作成することができます。

数値地形モデルの作成とは、自動標高抽出により方向を取得し、数値地形モデルファイルを作成する作業のことです。

標高の取得には自動標高抽出技術、等高線法、プレークライン方、標高点計測法またはこれらの併用法があります。

 

パスポイント&タイポイントとは?空中写真測量の手順や作業工程まとめ

名称 定義 注意点
パスポイント

タイポイント

同一コースの隣接写真の連結に用いられる点

重なり合う部分の中央(主点付近)と両端に1点ずつ3点をえらぶ

連結する各写真上の座標が正確に測定できる地点に配置

主点付近および主点基線に直角で等距離の両方に計3点以上配置

a,b,cの各点に区分し、主点付近をb点、上をa点、下をc点とする

タイポイント

タイポイント

隣接コース間の接続に用いられる点

隣接コースと重複している部分で空中写真上で明瞭に認められる位置に選定する

ブロック調整においては1モデルに1点を標準とし、ほぼ等間隔に設置

パスポイントで兼ねることができる

コース間のひずみが調整できるように、タイポイントが一直線上に並ばないようにジクザクに配置する

空中写真測量の作業工程

  1. 作業計画
  2. 標定点の設置
  3. 対空標識の設置
  4. 撮影
  5. 同時調整
  6. 現地調査
  7. 数値図化
  8. 数値編集
  9. 補測編集
  10. 数値地形図データファイルの作成
  11. 品質評価
  12. 成果などの整理

 

以上です。

ありがとうございました。

 

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