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予備放流と事前放流の違いについて!ダム事前放流の効果とは?

ダム

こんにちは、元土木公務員でダム管理者だったちゃんさとです。

今回のテーマは【事前放流】

事前放流って何?

予備放流と事前放流の違いや事前放流の効果などについてまとめましたのでぜひご覧ください。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ!

 

予備放流と事前放流の違いについて!ダム事前放流の効果とは?

黒部ダム

事前放流とは、ダムに残る利水も放流し、ダムの蓄えられる容量を増やし、異常気象に対応する対策です。

※利水というのは農業用の水など

緊急放流を回避する(可能性を低くする)ための放流ともいえます。

緊急放流は誤解されやすいので、そこら辺も併せてチェックしてみてください。

 

ダムには治水容量の下端水位を「制限水位」や「予備放流水位」と呼びますが、事前放流はその水位以下の利水まで使う放流です。

平成30年の7月豪雨を踏まえ、気候変動の影響により、今後も施設規模を上回る異常洪水が頻発することが懸念されるなか、そうした事態に備え、ハード・ソフト面から検討することを目的に国で検討会が設置されました。

そして、私が公務員でダム担当だった令和2年度では、そのような提言をもとにダムの放流量などが改めて定められ、事前放流を実施する訓練などがはじめて行われました。

事前放流が改めて提言され実施されたのはここ2020~2022年の話なのです。

 

一方で、比較されやすいのは【予備放流】

予備放流とは、洪水調節の必要があると想定される場合、平常時は利水容量となっている水を、前もって放流して洪水調節容量(治水容量)を確保することを指します。

この放流により確保する容量を「予備放流容量」と呼び、ダム計画における治水容量に含まれています。

つまり、事前放流も予備放流もどちらも利水を予め放流しダム容量を増やす形ですが、予備放流は制限水位までとなり、事前放流はさらに制限水位以下の水も放流しますよ、ということ。(事前放流量≧予備放流量)

事前放流 予備放流
ダムに残る利水も放流し、ダムの蓄えられる容量を増やし、異常気象に対応する対策

制限水位以下の利水まで放流する

洪水調節の必要があると想定される場合、平常時は利水容量となっている水を、前もって放流して洪水調節容量(治水容量)を確保すること

放流量は制限水位まで

 

ダムはなぜ前もって放流していない?

ダムはなぜ前もって放流していないのか!!!

ダム部にいたとき、上記のようなことを怒鳴り散らしてきた方がいらっしゃいました。

ここで、一般のみなさんにお伝えしたいのは、ダムにもキッチリ基準が設けられています。

ダムをつくった際、それぞれのダムで放流量や水位はきちんと決められています。

ただし、ここ数年で緊急放流(異常洪水時防災操作)が増えたのは、近年の雨量が”異常”で、ダムが対応できないほど降っているからです。(異常気象)

今までは、そのような気象が生じなかったため、ダムの操作というのも問題なく実施されてきました。

しかし、温暖化によるものなのか分かりませんが、近年の異常気象に対応できなくなったダムは全国で多くあるでしょう。

工事や事前放流のガイドライン作成など、早急に対応していましたが、気象変化の変動が大きく、数年前~現在、やむを得ず緊急放流したダムが多かったのは事実です。

だから「なぜ前もって放流していない?!」という疑問に対しては…、コホン。

【提言前は事前放流って制度がなかったんだし、その時に制限水位まで水を下げてても、そのダム容量を超える雨が降ったんだから緊急放流はしょうがないの💢💢💢!】

【規則に沿ってちゃんと放流してたよ!!!(制限水位まで)】

【近年の異常気象が本当に読めなくて、突発的に200も400ミリも降られたら対応しきれないよ…(泣)】

はぁ、はぁ…。すみません取り乱しました。(笑)

こんな感じの答え(反論)になります。(個人的見解ですのでよろしくお願いいたします。)

 

一方で昔に「事前放流」が行われなかった(対策できなかった)理由としては、雨量予測の精度が非常に低かったからです。

近年ではある程度、精度が上がってきたことから、事前放流が成り立つようになってきた感じです。

ただし、今でも雨量の精度は正直高いとは言えません。(雨量の予測は非常に困難)

実際に国がつくったダム雨量予測システムを見たことがありますが、やはりズレはあって、予測が外れれば利水分を失い、農業に使う水が不足するという懸念があります。

つまり事前放流のもう1つの側面として、利水分を放流するので農業関係者にご理解いただき、実施する放流だと知っておいてほしいです。

一方、ダムの役割などについてもう一度確認したい方は別記事でまとめていますので併せてご確認ください。

事前放流について伝えたいこと

宮ヶ瀬ダム

現在では、国がつくったダム雨量予測システムにより、できるだけ緊急放流がないように事前放流の実施を進めています。

緊急放流をしてほしくない!という下流に住むみなさんのため、台風や雨が予測される3日ほど前から事前放流を行うかどうか吟味しているのです。(ダム担当の皆様、本当にお疲れ様です。)

また知っておいてほしいのは、事前放流をしたからと言って、【緊急放流を絶対にしない】とは言えないことです。

事前放流でダム容量を増やしたとしても、それらを上回る量の雨が降れば、やむを得ず緊急放流する可能性もあります。

あくまで事前放流は緊急放流の可能性を低くしているだけであって、絶対に緊急放流を回避できるということではないことをご承知おきください。

 

予備放流と事前放流の違いについて!ダム事前放流の効果まとめ

事前放流

  1. 事前放流は平成30年の豪雨を受けて改めて国から提言されたもの(ほとんどのダムで昔は実施していない(存在していない))
  2. 事前放流は制限水位以下の利水も放流し、ダム容量を増やしておく(予備放流は制限水位まで)
  3. 事前放流が昔なかった(実施していなかった)のは、近年ほどの異常気象がなかったことと、雨量予測の精度が非常に低かったから
  4. 事前放流の実施によって緊急放流が減ることはまちがいない(効果)

事前放流の制度化によって、緊急放流が減ることは間違いないでしょう。

みなさんの安全のため、ダム担当者は異常気象が起こりうるとされる何日も前からダム操作や安全対策について準備・検討を行っています。

ダムの放流が実施される際には、川などには絶対に近づかないようにしてください。

また、自治体の避難勧告の指示にも必ず従ってください。

少しでも事前放流やダムについて知ってもらえたならうれしいです。

※最後に私はもう公務員ではないですしダム操作にも関わっておりません。個人的見解も含まれますので、何かご意見等ある場合はコメントにお願いいたします。

ありがとうございました。

 

この記事を書いている人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員の土木ブロガー💻
  • 国公立大学の土木工学科卒業
  • 大学卒業後、某県庁の公務員(土木職)として7年間はたらいた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • ダム管理や水道、道路、河川、砂防などの経験あり
  • 1級土木施工管理技士、危険物取扱者乙4、玉掛などの資格もち
  • 今はブログで土木施工管理技士の勉強方法や公務員のあれこれ、仕事をメインにさまざまな情報発信をしています。

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