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土木工事などでよく聞く【明かり掘削】
安全対策や勾配の基準、点検内容などをまとめましたので参考にしてください。
それではさっそくまいりましょう。
明かり掘削とは?掘削作業の安全管理や安全対策のほか勾配も解説
明かり掘削とは、
- 道路工事の山の切りとり
- ダムの基礎掘削
- 管路埋設のための溝掘削(布掘り)
- 岩盤の掘削
などのさまざまな掘削をあらわす総称です。
明かり掘削の作業は、地山の掘削や土石の運搬なども含まれ、単なる掘削作業だけを指すものではありません。
明かり掘削の安全管理および安全対策
明かり掘削の安全管理や対策について解説していきます。
明かり掘削まえの事前調査
地山の崩壊や埋設物の損壊による危険がある場合は、ボーリング調査などにより事前調査をしてください。
事前調査は掘削の時期や現場状況をよく確認してから行うようにしましょう。
事前調査確認事項
- 形状・地質および地層の状態
- きれつ、含水、湧水および凍結があるかどうか(またはその状態)
- 埋設物などがあるかどうか(またはその状態)
- 高温のガスまたは蒸気があるかどうか(またはその状態)
明かり掘削の計画の届け出と作業主任者の選任
明かり掘削をするときは、労働安全衛生規則などの基準にもとづいて、計画の届け出や作業主任者の選任をおこなわなければいけません。
作業計画の届け出基準は以下のとおり。
※掘削機械を使い、掘削面の下方に作業員が立ち入らない場合は対象外
作業計画は、工事の開始日14日前までに所轄の労働基準監督署に提出してください。
また、高さが2m以上となる地山の掘削作業をおこなうときは、地山の掘削および土留め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、【地山の掘削作業主任者】を選任することを義務づけています。
また、地山の掘削作業主任者の職務はこんな感じです。
地山の掘削作業主任者の職務
- 作業方法を決定し、作業を直接指揮すること
- 器具、工具を決定し、作業を直接指揮すること
- 安全帯等および保護帽の使用状況を監視すること
明かり掘削時の留意点
掘削するときに気をつけることは以下のとおりです。
1.掘削する深さが1.5mを超える場合は、原則として土留工をおこなうこと
土留め支保工や土留め壁については別記事で併せてご確認ください。
2.あらかじめ(運搬・積込・掘削)機械の経路や土石積み下ろし場所への出入り方法を定めて、関係作業員にお知らせしておくこと
3.明かり掘削をおこなうとき、労働者の作業箇所に後進したり、転落したりするおそれがあるときは、誘導者を配置しなければならない
4.物体の飛来または落下による危険を防止するため、作業員に保護帽を着用させること
5.安全に行うために、必要な照度を保つこと
6.掘削した土砂を法肩付近などに仮おきする場合は、掘削面の崩落や土砂等の落下が生じないように気をつけること
7.道路上の作業では、「道路工事保安施設設置基準」にもとづいて、各種標識、バリケード、夜間照明などを設置すること
8.地山の崩壊、土石の落下による危険のおそれがあるときは、以下の措置をおこなうこと
- 安全な勾配を保って掘削すること
- 落下のおそれがある土石をとりのぞく
- のり面が長いときは、数段に区切って掘削すること
- 擁壁や土留め支保工を設けること(必要な場合)
- 原因となる雨水、地下水を排除する
- 防護網を張る
- 土石が落下するおそれがあるときは、下方に通路などをつくらない
- のり尻付近では休憩などはしないこと
- 年少者には、のり尻付近などの土砂が崩壊するおそれがある場所で作業させてはならない
- 地山の崩壊、土石の落下のおそれがあるときは、作業員の立ち入りを禁止すること
人力掘削のとき!明かり掘削の勾配や高さ基準
人力掘削のときは、以下の掘削面の高さや勾配の基準を守って作業をおこないましょう。
地山の種類 | 掘削面の高さ | 掘削面の勾配 | イメージ図 |
岩盤
または 堅い粘土からなる地山 |
5m未満 | 90度 | |
5m以上 | 75度 | ||
その他の地山 | 2m未満 | 90度 | |
2m以上~5m未満 | 75度 | ||
5m以上 | 60度 | ||
砂からなる地山 | 掘削面の勾配35度以下
または 高さ5m未満 |
||
発破などで崩壊しやすい状態になっている地山 | 掘削面の勾配45度以下
または 2m未満 |
構造物または埋設物近くを明かり掘削するとき
構造物や埋設物があるところを掘削するときは、労働安全衛生規則や公衆災害防止対策要綱にもとづいた注意が必要です。
労働安全衛生規則
1.埋設物、ブロック塀、擁壁などの建設物のちかくを掘削する場合において、これらの転倒、崩壊等の危険のおそれがあるときは、補強し、移設などの危険防止措置をおこなったあとに作業すること
2.機械の使用(掘削・積み込み・運搬)により、地下に存在する工作物の崩壊による危険のおそれがあるときは、機械は使わないこと
3.掘削作業で露出したガス導管の損壊による危険のおそれがあるときは、吊り防護、受け防護、ガス導管の移設などの危険防止措置をおこなったあとに作業すること
4.ガス導管の防護作業については、作業を指揮する者を指名して、その者の直接指揮のもとで作業をおこなうこと
公衆災害防止対策要綱
1.埋設物が予想される場所で掘削する場合は、試掘をおこない、原則として目視により確認すること
2.埋設物を確認したときには、その位置を(道路)管理者および埋設物管理者に報告すること
3.管理者不明の埋設物がみつかった場合は、埋設物調査で管理者を特定し、立会いのもと処置をおこなうこと
4.杭や矢板などを打設する場合においては、埋設物の位置を2mほど試掘をおこない、埋設物が確認されたときは、布掘りまたはつぼ掘りをおこなって露出させること
5.掘削作業で出てきた埋設物には、
- 埋設物の名称
- 保安上の必要事項
- 管理者の連絡先
などを記入した掲示板をとりつけて、工事管理者に注意喚起すること
6.掘削作業で露出した埋設物がすでに破損していた場合には、ただちに工事発注者および埋設物管理者に連絡し、修理などの措置を求めること
7.可燃性物質の埋設物付近において、溶接機、切断機など火気をともなう機械器具は使用してはならない。
ただし埋設物管理者と協議し、まわりに可燃性ガスなどが存在しないことが確認された場合および保安上必要な措置をおこなう場合は、火気をともなう機械器具を使うこともできる
埋設物の保安上必要な措置
- 可燃性ガスの存在の有無を検知器などで確認
- 熱遮へい装置の設置
明かり掘削における点検
明かり掘削をするときの点検時期や項目内容は以下のとおりです。
明かり掘削の点検時期
- その日の作業開始まえ
- 大雨のあと
- 中震以上(震度4くらい)の地震のあと
- 発破をおこなったあと
明かり掘削の点検項目
- 浮石、亀裂の有無および状態
- 含水、湧水、凍結の状態の変化
- 発破をおこなった箇所とその周辺の浮石、亀裂の有無および状態
明かり掘削とは?掘削作業の安全管理や安全対策のほか勾配も解説まとめ
明かり掘削まとめ
- 明かり掘削とは、道路工事の山の切りとりやダムの基礎掘削などのさまざまな掘削をあらわす総称
- 地山の崩壊や埋設物の損壊による危険がある場合は、ボーリング調査などにより事前調査すること
- 掘削の高さまたは深さが10m以上である地山の掘削をおこなうとき、工事開始の14日前までに、作業計画を労働基準監督署に提出すること
- 高さが2m以上となる地山の掘削作業をおこなうときは、地山の掘削および土留め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、【地山の掘削作業主任者】を選任すること
- 明かり掘削をおこなうときは、掘削高さや勾配、埋設物などに注意しながらおこなうこと
点検の時期
- その日の作業開始まえ
- 大雨のあと
- 中震以上(震度4くらい)の地震のあと
- 発破をおこなったあと
点検項目
- 浮石、亀裂の有無および状態
- 含水、湧水、凍結の状態の変化
- 発破をおこなった箇所とその周辺の浮石、亀裂の有無および状態
今回は以上です。
参考になればうれしいです。
ありがとうございました。
この記事を書いた人
- 元公務員の土木ブロガー💻
- 国立大学の土木工学科卒業
- 大学卒業後、某県庁の公務員(土木職)として7年間働いた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
- 1級土木施工管理技士、玉掛け、危険物取扱者乙4などの資格もち
- 今はブログで土木施工管理技士の勉強方法や土木知識をメインにさまざまな情報発信をしています。