今回のテーマは【型枠の取り外し順序や材料・設計・施工】について!
型枠は、コンクリート構造物をつくるのに欠かせない作業のひとつです。
基本は設計図に示されている形状や寸法に従って施工します。
一方でこの記事では、型枠の材料、設計、施工、取り外し順序など、それぞれで気を付けなければならないことや基本知識をまとめましたので参考にしてください。
それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次(もくじ)からどうぞ 🙂
型枠の取り外し順序や材料・設計・施工について!基本をまるっとかんたん解説
型枠の材料
型枠に使用する材料は、木板や合板、プラスチックや鋼材などがありますが、それぞれJISやJAS(日本農林規格)に定める規格材を用います。
規格化されていない材料の型枠を用いる場合には、型枠支保工用材料の許容応力度の値を定めているので、これを考慮しなければなりません。
一方で、型枠の転用回数は、合板の場合5回程度、プラスチック型枠の場合20回程度、鋼製型枠の場合30回程度が目安ですので覚えておきましょう。
型枠の設計や型枠に働く側圧について
コンクリート構造物の型枠を設置するにあたって、設計では
設計荷重
- 鉛直方向荷重
- 水平方向荷重
の2つを考えます。
型枠の鉛直方向荷重
鉛直方向の荷重としては、型枠のほか、支保工、コンクリート、鉄筋、作業員、施工機械器具、仮設備等の質量および衝撃を考えます。
型枠の計算に用いる単位容積質量は以下のとおり。
コンクリートの種類 | 単位容積質量(t/m³) | |
普通骨材コンクリート | 2.4 | |
人工軽量骨材コンクリート | 骨材の全部が軽量骨材 | 1.7 |
骨材の一部が軽量骨材 | 1.9 |
そして死荷重以外の作業荷重および衝撃荷重は、一般に2.5kN/m²以上です。
型枠の水平方向荷重
水平方向の荷重としては考えられるものはこんな感じです。
水平方向荷重
- 型枠の傾斜
- 作業時の振動
- 衝撃
- 通常考えられる偏載荷重
- 施工誤差
そのほか、必要に応じて風圧、流水圧、地震などを考慮してください。
また照査水平方向荷重については、設計鉛直荷重の5%と仮定します。
さらに擁壁のような壁の型枠は、型枠面積に対して500N/m²以上の横方向荷重が作用するものとしてください。
一方で、コンクリートの型枠に働く側圧についても考えていきましょう。
コンクリートの側圧は、使用材料、配合、打ち込み速度、打ち込み高さ、締固め方法および打ち込み時のコンクリート温度などによって異なります。
また使用する混和剤の種類、部材の断面寸法、鉄筋量によっても影響を受けます。
コンクリート側圧が大きくなる条件は以下の表にまとめましたので参考にしてください。
コンクリートの側圧が大きくなる条件 | 上部荷重が大きい |
コンクリートの打ち上がり速度が速い | |
コンクリートの重量(比重)が大きい | |
コンクリートが柔らかい | |
コンクリートのスランプが大きい | |
コンクリートが固まり難い | |
養生温度が低い | |
コンクリート温度が低い | |
遅延剤などにより強度発現を遅くしたコンクリート |
たとえば、スランプが10㎝程度以下の柱などのコンクリートの側圧を計算するには、以下の式が用いられます。
【算定式例】
側圧(N/㎜²)=7.8×10⁻³+(0.78×打ち上がり速度)/(コンクリート温度+20)
そして、型枠の設計における基礎知識や注意点をまとめましたので参考にして下さい。
型枠の設計
- 型枠は作用する荷重に対して、形状および位置を正確に保てるように、適切な締め付け材などを用いて固定する
- 型枠は組み立ておよび取り外し作業が容易に行えるとともに、取り外し時にコンクリートその他に振動や衝撃を与えない構造とする
- せき板またはパネルの継目はなるべく部材軸に直角または平行とし、モルタルの漏れない構造とする
- とくに指定のない場合でも、コンクリートのかどに面取りができる構造とする
- 型枠の清掃、検査およびコンクリートの打ち込みに便利なように、適当な位置に一時的に開口を設ける
- 重要な構造物の型枠については設計図を作成する
またコンクリートの打込みや締固めについては別記事で併せてご確認ください。
型枠を施工するときの基礎知識や注意点
つづいては型枠の施工についてです。
型枠の締め付けには、ボルトまたは棒鋼を用いることを標準とします。
締め付け材は、型枠を取り外した後コンクリート表面に残しておいてはいけません。
さらにセパレータ(棒鋼)があることにより、沈下ひび割れが生じる恐れがあるため、振動機を用いて十分な締固めを行いましょう。
コンクリートの表面から2.5㎝の間にあるボルト、棒鋼などの部分は、穴をあけて取り除き、穴は高品質なモルタルなどで埋めておく必要があります。
せき板内面には、コンクリートが型枠に付着するのを防ぐとともに、型枠の取り外しを容易にするため、はく離剤を塗布することが原則です。
そしてコンクリートを打ち込む前および打ち込み中に、型枠の寸法および不具合の有無を管理しなければいけません。
型枠の検査や取り外し方・順序
型枠の検査では、
型枠の検査
- 型枠のはらみ
- モルタルの漏れ
- 移動
- 傾き
- 沈下
- 接続部のゆるみ
- その他の異常の有無
などをチェックします。
そして型枠の取り外しについては、まずコンクリート標準示方書を確認してください。
型枠を取り外してよい時期のコンクリートの圧縮強度の参考値は以下の通りです。
部材面の種類 | 例 | コンクリート圧縮強度
(N/㎜²) |
厚い部材の鉛直または鉛直に近い面、傾いた上面、小さいアーチの外面 | フーチング側面 | 3.5 |
薄い部材の鉛直または鉛直に近い面、45°より急な傾きの下面、小さいアーチの外面 | 柱、壁、はりの側面 | 5 |
橋、建物などのスラブ、および梁、45°よりゆるい傾きの下面 | スラブ、はりの底面、アーチの内面 | 14 |
型枠はコンクリートがその自重および施工中に加わる荷重を受けるのに必要な強度に達するまで取り外してはいけません。
固定ばり、ラーメン、アーチなどでは、コンクリートのクリープを利用して構造物にひび割れが出るのを少なくするためにコンクリートが所定の強度に達したならば、なるべく早く型枠を取り外しましょう。
柱、壁などの型枠は、スラブ、はり等の水平部材の型枠よりも先に取り外します。
型枠を取り外す順序は、比較的荷重を受けない部分を取り外し、そのあと残りの重要な部分を取り外すようにしましょう。
また型枠、とくにせき板を取り外す場合には、構造物はまだ十分な強度を発揮するに至っていないので、コンクリートのかどを欠いたり、構造物に振動や衝撃を加えたりしないように注意してください。
また、せき板が存置されているからといって、コンクリートが十分に養生されているわけではありません。
せき板を取り外した後も、所定の期間は湿潤状態を保つことが大切です。
型枠の取り外し順序や材料・設計・施工まとめ
ポイント
- 型枠に使用する材料は、木板や合板、プラスチックや鋼材などがありますが、それぞれJISやJAS(日本農林規格)に定める規格材を用いる
- 型枠設置では垂直荷重と鉛直荷重について考慮する
- 型枠の締め付けには、ボルトまたは棒鋼を用いることを標準とする
- 締め付け材は、型枠を取り外した後コンクリート表面に残しておいてはいけない
- セパレータ(棒鋼)があることにより、沈下ひび割れが生じる恐れがあるため、振動機を用いて十分な締固めを行う
- 型枠はコンクリートがその自重および施工中に加わる荷重を受けるのに必要な強度に達するまで取り外してはいけない
- 固定ばり、ラーメン、アーチなどでは、コンクリートのクリープを利用して構造物にひび割れが出るのを少なくするためにコンクリートが所定の強度に達したならば、なるべく早く型枠を取り外す
- 柱、壁などの型枠は、スラブ、はり等の水平部材の型枠よりも先に取り外す
- 型枠を取り外す順序は、比較的荷重を受けない部分を取り外し、そのあと残りの重要な部分を取り外すようにする
以上です。
ありがとうございました。