コンクリートは強くて長寿命な材料ですが、化学的な作用によって劣化が進むと、ひび割れや強度低下など、構造物の安全性を脅かす深刻な問題につながります。
とくに酸性水・硫酸塩・塩化物などの化学物質は、コンクリート内部の成分と反応して組織を破壊し、劣化を加速させる原因になります。
この記事では、化学的侵食が起こるメカニズムや代表的な原因をわかりやすく整理し、実際に取られている対策方法までを体系的に解説します。
コンクリートの化学的侵食とは?メカニズムや原因
コンクリートの化学的侵食について解説していきます。
コンクリートの化学的侵食のメカニズムとは?

化学的侵食とは、酸性物質や硫酸イオンとの接触によりコンクリートの硬化体が分解したり、化合物生成時の膨張圧によってコンクリートが劣化する現象のことです。
コンクリートの化学的侵食のメカニズムは、コンクリート内部の成分(主に水酸化カルシウムやC-S-H など)と外部から侵入する化学物質が反応し、組織が分解・溶解・膨張することで劣化が進む現象として理解できます。
反応そのものは目に見えませんが、内部で静かに進行し、最終的にはひび割れ・強度低下・鉄筋腐食などの重大な損傷につながります。
コンクリートの化学的侵食の原因とは?

一般的には、コンクリートにおける化学的侵食の劣化要因は酸性物質や硫酸イオンと覚えておけばOKです。
また、酸性物質や硫酸イオンなどの侵入性物質以外にも以下のような原因も考えられます。
- 酸
- 動植物油
- 無機塩類
- 腐食性ガス
- 炭酸ガス
- 硫酸の生成を伴う微生物の作用
また代表的な化学的侵食の種類と特徴は以下のとおりです。
ポイント
- 酸侵食(酸性水による溶解)→コンクリートのアルカリ性が中和され、骨材をつなぐ成分が失われる。
- 硫酸塩侵食(エトリンガイト生成による膨張)→下水道や硫酸塩土壌で多発。膨張ひび割れが特徴。
- 塩化物侵食(鉄筋腐食の促進)→海岸部・融雪剤・海砂の使用などが原因。
- 軟水侵食(カルシウムの溶脱)→山間部の軟水や地下水でゆっくり進行。
化学的侵食以外のコンクリート劣化機構についてはまた別記事でご確認ください。
コンクリートの化学的侵食の特徴

コンクリート化学的侵食の特徴はこちらです。
コンクリート化学的侵食の特徴
- 水に溶けにくいセメント水和物を可溶性物質に変化させ、コンクリート組織がこわされる&劣化する
- 膨張性化合物をつくり、コンクリートが膨張圧により破壊される
- コンクリート中のセメント水和物が外に溶けだしてコンクリートが劣化する
化学的侵食➀水に溶けにくいセメント水和物を可溶性物質に変化させる
コンクリート中のセメント水和物と化学反応を起こし、水に溶けにくいセメント水和物を可溶性物質に変化させます。
そうすると、コンクリート組織が多孔質化したり分解したりすることにより劣化の原因になります。
酸、動植物油、無機塩類、腐食性ガス、炭酸ガス、硫酸の生成を伴う微生物の作用
化学的侵食②膨張性化合物をつくる
化学的侵食により、コンクリート中のセメント水和物と反応して新たに膨張性化合物を生成します。
そしてこの膨張性化合物が生成するときの膨張圧により、コンクリートが破壊されてしまうのです。
動植物油、硫酸塩、海水、アルカリ濃厚溶液
化学的侵食③コンクリート中のセメント水和物が外に溶けだしてしまう
コンクリートが長期間にわたって水に接することも、化学的侵食が起こる原因のひとつです。
これによりコンクリート中のセメント水和物の成分が外部に溶けだして、コンクリートの硬化体組織が多孔化し、劣化します。
コンクリート化学的侵食の対策
化学的侵食の対策としては、以下の4つが考えられます。
コンクリート化学的侵食の対策
- コンクリート表面被覆
- 腐食防止処置がしてある補強材の使用
- かぶりを十分とるなどして鋼材を保護する
- 水セメント比を小さくして密実なコンクリートとする
コンクリート表面被覆
表面被覆とは、コンクリート構造物の表面に被覆材を塗布することです。
コンクリート表面に膜をつくるイメージですね。
コンクリートの劣化因子となる塩分・水・酸素・炭酸ガス等の外部からの浸入を抑制し、中性化・塩害・アルカリ骨材反応等の劣化対策において非常に有効な工法となります。
表面被覆工法には、有機系被覆と無機系被覆があり、対象となるコンクリート構造物の環境条件や予測される劣化要因に応じて、最も効果的な工法を選定すること大切です。
- 樹脂材料 エポキシ,ポリウレタンなど
- 形成される被膜が緻密なため、優れた防水性、遮塩性および中性化抑止性の性質を持ちます。また、耐薬品性が高く下水道施設などでライニングに使用する場合もあります。
- 無機質系材料をベースに用いた耐候性に優れた表面保護塗装材で、高弾性のため伸び能力に優れ、安全で環境に優しい材料です。
- 防水性・遮塩性と、中性化抑止性を有する無機質系高弾性被覆材で、コンクリートに有害な外部からの雨水や炭酸ガス、塩化物イオンの浸入を防ぐ効果があります。
腐食防止処置がしてある補強材の使用
腐食防止としては、金属表面に被膜を形成するものがあります。
被膜を形成するもの
- ケイ酸塩
- リン酸塩
- アミン
- 酸化剤
これらにより、化学的侵食を防ぐ効果があります。
かぶりを十分とるなどして鋼材を保護する
かぶりとは、鋼材からコンクリート表面までの最短キョリで計測したコンクリートの厚さです。
要はコンクリートに厚みをもたせれば、侵入性物質の侵入の可能性が低くなります。
水セメント比を小さくして密実なコンクリートとする
水セメント比とはW/ C(水÷セメント)のことです。
水セメント比が小さければ密度の高いコンクリートがつくれます。
可能な範囲で、水セメント比は小さくしましょう。
参考に、コンクリート標準示方書に記載されている水セメント比(%)の基準値をのせておきます。
| 種別 | 構造物の露出状態 | 気象条件 | |||
| 気象作用が激しい場合、または凍結融解がしばしば繰り返される場合 | 気象作用が激しくない場合、氷点下の気温となることが稀な場合 | ||||
| 断面 | |||||
| 薄い場合 | 一般の場合 | 薄い場合 | 一般の場合 | ||
| 一般の無筋および鉄筋コンクリート | ①連続して、あるいはしばしば水で飽和される部分 | 55 | 60 | 55 | 65 |
| ②普通の露出状態にあり、①に属さない場合 | 60 | 65 | 60 | 65 | |
| ダムコンクリート | 60 | 65 | |||
| 舗装コンクリート | 気象条件 | ||||
| 気象作用が激しい場合、凍結融解がしばしば繰り返される場合 | 気象作用が激しくない場合、氷点下の気温となることが稀な場合 | ||||
| 45 | 50 | ||||
コンクリートの化学的侵食|メカニズムや原因・対策まとめ
今回は以上です。
参考になればうれしいです。
ありがとうございました。
