今回のテーマは【TDM(Transportation Demand Management)】
土木分野では都市計画や交通関連の基礎知識であり、「交通需要マネジメント」と呼ばれます。
定義から内容までサクッと解説していきますのでぜひどうぞ!
それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からご覧ください。
TDMとは?交通需要マネジメントの都市交通計画まるっと解説
都市計画や交通関連で使われる【TDM】とはTransportation Demand Managementの略で、日本語では「交通需要マネジメント」と呼ばれます。
TDMは、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化を行います。
いわゆる「交通需要の調整」ですね。
よってTDMの取り組みにより、道路交通混雑を緩和していくことが可能となります。
TDM(交通需要マネジメント)の具体例
それではTDMの具体例についてみていきます。
考えられる内容はこんな感じです。
TDMの具体例
- 交通手段の変更
- 交通経路の変更
- 時間帯の変更
- 自動車の効率的利用
- 発生源の調整
交通手段の変更
自動車から鉄道やバスなどの公共交通機関への変更を促し、混雑を緩和します。
そのほか、パークライド(パーク&バスライド)駐車場の利用が挙げられるでしょう。
また、鉄道の案内情報の充実や利用しやすい車両、施設への改造、LRT、コミュニティバスの整備など、利便性を向上させていくことも大切です。
さらに自転車利用の環境整備も行うことも、交通手段変更のひとつです。
項目 | TDM施策 |
複数手段の組み合わせ | パーク&ライド |
パーク&バスライド | |
キス&ライド | |
ライド&ライド | |
サイクル&ライド | |
サイクル&バスライド | |
バス走行条件の改善 | バス専用道 |
バス専用レーン | |
交差点でのバス優先方策 | |
バス停でのバス優先方策 | |
高速道路でのバス専用ランプ | |
バスサービスの改善 | バス車両の改善(乗降等) |
バス路線の運用 | |
バス停車方式(快速、フリー乗降等) | |
バスターミナル整備 | |
バス停整備 | |
案内情報 | |
バスロケーションタイム | |
バス運賃制度 | |
鉄軌道サービスの改善 | 均一運賃 |
共通運賃制度 | |
時差料金制度 | |
運行ダイヤ改善 | |
路線の相互乗り入れ | |
車内情報提供 | |
新しい交通システムの改善 | 乗合タクシー |
LRT | |
都市水上バス | |
短距離交通システム(キャビン型) | |
動く歩道 |
交通経路の変更
カーナビによる渋滞情報や、駐車場情報の提供などにより、混雑する道路の交通を分散させ、交通需要の空間的な平準化を行うことができます。
また交通管理者による交通管制の高度化など、より精度の高い情報が求められています。
項目 | TDM施策 |
通信技術活用による交通円滑化 | 通信による交通誘導 |
駐車場案内システム | |
駐車場誘導システム |
時間帯の変更
朝夕の通勤ラッシュにおける交通をピーク時間外にシフトさせ、交通需要の時間的な平準化を行います。
たとえば、フレックスタイムの促進や、物流における朝夕の時間帯を避けた配達、ジャストインタイム、商習慣(5・10日等)の見直しなどが挙げられます。
項目 | TDM施策 |
通勤時間の変更 | 時差通勤 |
フレックスタイム | |
勤務時間の変更 | 圧縮勤務 |
自動車の効率的利用&抑制
相乗り(カープール)や共同利用(カーシェアリング)、共同集配・輸送など、車やトラックの乗車率や積載率を高めて、交通混雑を緩和しようする取り組みです。
項目 | TDM施策 |
自動車利用の効率化 | 相乗り(カープール、バンプール) |
HOVレーン | |
物流システムの合理化 | |
自動車利用の抑制 | ジャストインタイムの見直し |
持ち帰り車の排除 | |
5・10日商習慣の見直し |
交通発生源の調整および抑制
自動車交通の発生量を調整したり、抑制したりするものです。
たとえば、具体例を挙げると以下のとおり。
交通発生の調整(抑制)
- 在宅勤務
- 職住近接のまちづくり
- カーフリーデーの実施
- ロードプライシング
- ナンバー規制
- 炭素税(環境税)
項目 | TDM施策 |
発生量の削減 | ノーマイカーデー |
在宅勤務 | |
SOHO | |
テレコミューティング | |
自動車流入の制限 | ロードプライシング |
車両ナンバー規制 | |
トラフィックセル | |
トランジットモール | |
コミュニティ道路 | |
環境税 |
とくにトランジットモールとは、安全な歩行空間のこと。(一般車両は通行禁止)
ラドバーンとも関連する内容です。
中心市街地やメインストリートなどの商店街を歩行空間(モール)として整備するとともに、バスや路面電車など公共交通(トランジット)だけを通行させます。
そしてモール内や外部空間とモールを結ぶ安全で快適な移動手段として活用されています。
TDMとマルチモーダル交通施策の違いと共通点
一方、TDMと比較されるのがマルチモーダル交通施策です。
違いや共通点は以下のとおり。
マルチモーダル交通施策 | 共通 | TDM施策 |
空港、湾岸、駅などの交通拠点へのアクセス強化
鉄道と高速バスの結節強化 バリアフリーの歩行空間の整備 駅前広場の整備 歩行者支援施設の整備 アクセス道路の整備 |
バスの使いやすさ向上
パーク&ライド パーク&バスライド バスやPTPS(公共車両優先システム)の整備 共同集配の実施 ロジティクスセンターなどの整備 道路交通・駐車場情報の提供 大量公共輸送機関の再編成等利用促進 地下鉄や路面電車の整備支援 新交通システム、都市モノレールの整備支援 トランジットモールの導入 自転車利用の促進 自転車レーン、自転車駐車場の整備など |
相乗り(カープール)やシャトルバス
フレックスタイムや時差通勤・通学 ロードプライシング 相乗り車(HOV)優先レーンの整備 駐車場マネジメント |
TDM(交通需要マネジメント)調査の手順と課題
TDM調査の手順は以下のとおりです。
①現況分析 | |
②問題把握 | |
③施策提案 | |
④需要予測 | |
⑤施策評価 | ⑤-1試行実験 |
⑤-2実験からの解析 | |
⑤-3実験からの施設評価 | |
⑥施策実施 |
基本的な交通体系は、パーソントリップ調査の分析結果を基に基本計画が策定されます。
しかしパーソントリップ調査は10年に1回程度の実施であるため、社会情勢の変化がどれだけ反映されているかは疑問です。
またTDM施策を実施に移すのは、基本データも十分でなくリスクも大きいことから、行政サイドもなかなかできないのが現状でしょう。
さらにTDM施策の評価はB/C(費用便益分析)が基本ですが、それらを踏まえた評価指標の設定や定量化などが課題と言えます。
一個人としては、これらの課題を乗り越え、TDM施策が推進されていくことを切に願います。
TDMとは?交通需要マネジメントの都市交通計画まとめ
都市計画や交通関連で使われる【TDM】とはTransportation Demand Managementの略で、日本語では「交通需要マネジメント」と呼ばれる
TDMは、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化を行う
項目 | TDM施策 |
複数手段の組み合わせ | パーク&ライド |
パーク&バスライド | |
キス&ライド | |
ライド&ライド | |
サイクル&ライド | |
サイクル&バスライド | |
バス走行条件の改善 | バス専用道 |
バス専用レーン | |
交差点でのバス優先方策 | |
バス停でのバス優先方策 | |
高速道路でのバス専用ランプ | |
バスサービスの改善 | バス車両の改善(乗降等) |
バス路線の運用 | |
バス停車方式(快速、フリー乗降等) | |
バスターミナル整備 | |
バス停整備 | |
案内情報 | |
バスロケーションタイム | |
バス運賃制度 | |
鉄軌道サービスの改善 | 均一運賃 |
共通運賃制度 | |
時差料金制度 | |
運行ダイヤ改善 | |
路線の相互乗り入れ | |
車内情報提供 | |
新しい交通システムの改善 | 乗合タクシー |
LRT | |
都市水上バス | |
短距離交通システム(キャビン型) | |
動く歩道 |
以上です。
ありがとうございました。
この記事を書いた人
- 元公務員(土木職)の土木ブロガー💻
- 国立大学★土木工学科卒業(学士)
- 大学卒業後、某県庁の地方公務員(土木職)に合格!7年間はたらいた経験をもつ
- 1級土木施工管理技士・危険物取扱者(乙)・玉掛け等の資格もち
- ブログで土木、土木施工管理技士の勉強方法や公務員のあれこれ、仕事をメインにさまざまな情報を発信
- 書籍【土木技術者のための土木施工管理の基礎】好評発売中!