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電気防食工法をわかりやすい解説で!外部電源方式や電気防食などの施工

電気防食工法

電気防食工法とは、コンクリート構造物の表面付近に設置した陽極から、コンクリート中の鋼材へ直流電流を流すことにより、鋼材表面の腐食電池の形成を抑制し、コンクリート構造物の劣化を防ぐ工法です。

電源方式や陽極材の種類と、電気化学的工法についてご紹介します。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ 🙂

 

電気防食工法をわかりやすい解説で!外部電源方式や電気防食などの施工

一般的な電気防食工法はこんな感じ!

電気防食工法により、コンクリートの劣化やひび割れを防ぐことができます。

陽極材 電源方式 設置・施工方法 陽極材の種類
面状陽極方式 流電陽極方式 防食対象面全体に面状陽極を設置 亜鉛シート

亜鉛アルミ擬合金溶射

外部電源方式 チタンメッシュ

パネル陽極

導電性塗料

チタン溶射

導電性モルタル

線状陽極方式 外部電源方式 防食対象面に一定間隔で線状陽極を設置 チタングリッド

チタンリボンメッシュ

点状陽極方式 外部電源方式 防食対象面に棒状陽極を点状に挿入し設置 チタンロッド

電気防食工法は、コンクリート表面から電気を供給する方法の違いで2種類に分けられ、外部から電気を供給する外部電源方式と、コンクリート表面に設置する金属(亜鉛やアルミなど)とコンクリート内部の鋼材(鉄)との金属固有の電位差によって電流が供給される流電陽極方式があります。

外部電源方式は鋼材の腐食状態に応じて供給する電流量を調整できるため多様な腐食環境に適合します。

また、防食電流の供給方法や陽極材の形状、陽極システムの設置方法などによって選択できる多様な方式があります。

ちなみに流電陽極方式は電流管理が不要かつ電気料のかからない方法だよ

それぞれの陽極方式のイメージは以下の表をご覧ください。

線状陽極方式 点状陽極方式
線状陽極方式
面状陽極方式 流電陽極方式

厳しい腐食環境にある鋼材の腐食を停止できるため、塩害や中性化が進行した構造物に有効です。

電気の供給はコンクリート表面からコンクリート内部の鋼材に向けて継続して行います。

一方でコンクリート表面から電気を流すためには、電極や配管材および通電状況を管理するための電源装置などの電気設備が設置されますが、この電気設備は長期間にわたって維持する必要があります。

そのほかのコンクリート補修工法についてはまた別記事でまとめていますので併せてご確認ください。

 

電気防食工法以外の電気化学的工法(脱塩・再アルカリ化)

電気防食工法以外に、電気化学的工法としては脱塩工法と再アルカリ化工法が挙げられます。

脱塩工法

脱塩工法は、塩害によってコンクリート中に侵入した塩化物(塩素イオン:マイナスイオン)を電気の流れ(電気泳動)によってコンクリート外部に 排出します。

そしてコンクリート中の塩化物量を低減することで鋼材の腐食環境を改善する手法です。

工法の種類や設置方法はこんな感じ 🙂

工法名 陽極の設置方法 適用できる構造物の形状
パネル式 金属製陽極材を配置したプラスチックパネルをコンクリート面に固定し、電解質溶液をパネル内に充填する 平坦な表面形状(水平面、垂直面)
ポンディング式 コンクリート面に電解質溶液を溜め、その中に金属製陽極材を設置する 電解質溶液が貯留できる構造物
ファイバ式 コンクリート面に配置した金属製陽極材周辺に電解質溶液を含浸させたセルロースファイバを吹付ける 複雑な表面形状(水平面、垂直面)
簡易吸水式 コンクリート面に不織布と金属製陽極材を設置し、さらに緩衝シートで覆い空気を吸引させ緩衝シートをコンクリート面に押し付け、電解質用溶液を供給する 平坦な表面形状
吸水マット式 コンクリート面に吸水マットと金属製陽極材を設置し、さらにパネルで覆い電解質用溶液を供給する 平坦な表面形状(垂直面)

特徴としては以下のとおりです。

脱塩工法の特徴

  1. 脱塩工法は構造物の形状や仮設陽極の設置方法などによって選択できる方式がある
  2. 脱塩工法が完了した後には設置した設備は残らず、元のコンクリート構造物と同様の維持管理が可能
  3. コンクリート表面に設置した電極(金属製陽極材と電解質溶液)からコンクリート内部の鋼材に向けて電気(約1A/m2)を流し,一定の期間(8週間程度)で塩化物を除去
  4. 塩化物を除去するとともに鉄筋周囲のアルカリ性が増加し、長期間にわたって防食効果が持続

一方で注意点としては、PC構造物への適用では、PC鋼材の水素脆化に対する配慮が必要で、専門家との電流の調整や通電時間の調整も必須です。

さらに外部からの塩分侵入による塩害の場合、脱塩後は塩分の浸入が施工前より早くなるため、施工後の表面保護塗装が必要になります。

 

再アルカリ化工法

再アルカリ化工法は中性化によってコンクリート中のアルカリ性が失われ、鋼材が腐食しやすくなった環境を電気の流れによってアルカリ成分をコンクリート中に侵入させることで。コンクリートのアルカリ性を回復させ鋼材の腐食環境を改善する手法です。

工法の種類や設置方法は脱塩工法とほぼ同じです。

工法名 陽極の設置方法 適用できる構造物の形状
パネル式 金属製陽極材を配置したプラスチックパネルをコンクリート面に固定し、電解質溶液をパネル内に充填する 平坦な表面形状(水平面、垂直面)
ポンディング式 コンクリート面に電解質溶液を溜め、その中に金属製陽極材を設置する 電解質溶液が貯留できる構造物
ファイバ式 コンクリート面に配置した金属製陽極材周辺に電解質溶液を含浸させたセルロースファイバを吹付ける 複雑な表面形状(水平面、垂直面)
簡易吸水式 コンクリート面に不織布と金属製陽極材を設置し、さらに緩衝シートで覆い空気を吸引させ緩衝シートをコンクリート面に押し付け、電解質用溶液を供給する 平坦な表面形状
吸水マット式 コンクリート面に吸水マットと金属製陽極材を設置し、さらにパネルで覆い電解質用溶液を供給する 平坦な表面形状(垂直面)

再アルカリ化工法の特徴

  1. 再アルカリ化工法は構造物の形状や仮設陽極の設置方法などによって選択できる方式がある
  2. 再アルカリ化工法が完了した後には設置した設備は残らず、元のコンクリート構造物と同様の維持管理が可能
  3. コンクリート表面に設置したアルカリ性溶液と電極(金属製陽極材)からコンクリート内部の鋼材に向けて電気(約1A/m2)を流し一定の期間(14日以内)でアルカリ性を回復させる
  4. 鉄筋周囲のアルカリ性が回復し長期間にわたって防食効果が持続する

留意点としては実績が少なく処理後の長期耐久性が十分確認できていないことです。

また通電処理によるアルカリ骨材反応の促進問題やPC鋼材の水素ぜい化問題などが考えられます。

 

電気防食工法をわかりやすい解説で!外部電源方式や電気防食などの施工まとめ

電気防食工法とは、コンクリート構造物の表面付近に設置した陽極から、コンクリート中の鋼材へ直流電流を流すことにより、鋼材表面の腐食電池の形成を抑制し、コンクリート構造物の劣化を防ぐ工法

線状陽極方式 点状陽極方式
線状陽極方式
面状陽極方式 流電陽極方式
陽極材 電源方式 設置・施工方法 陽極材の種類
面状陽極方式 流電陽極方式 防食対象面全体に面状陽極を設置 亜鉛シート

亜鉛アルミ擬合金溶射

外部電源方式 チタンメッシュ

パネル陽極

導電性塗料

チタン溶射

導電性モルタル

線状陽極方式 外部電源方式 防食対象面に一定間隔で線状陽極を設置 チタングリッド

チタンリボンメッシュ

点状陽極方式 外部電源方式 防食対象面に棒状陽極を点状に挿入し設置 チタンロッド

電気防食工法以外に、電気化学的工法としては脱塩工法と再アルカリ化工法などがある

 

以上です。

ありがとうございました。

 

この記事を書いた人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員の土木ブロガー💻
  • 国立大学★土木工学科(コンクリート研究室)卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の地方公務員(土木職)に合格!7年間はたらいた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • 現場監督・施工管理の経験あり
  • 1級土木施工管理技士・危険物取扱者(乙)・玉掛け等の資格もち
  • ブログで土木、土木施工管理技士の勉強方法や土木知識をメインに情報を発信
  • 書籍【土木技術者のための土木施工管理の基礎】好評発売中!

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