盤ぶくれ・ボイリング・ヒービングは、いずれも掘削工事で起こり得る地盤トラブルですが、発生原因や地盤条件、対策はそれぞれ大きく異なります。
違いを正しく理解していないと、試験問題や現場対応で混同してしまうことも少なくありません。
本記事では、それぞれのメカニズムと発生条件、具体的な対策をわかりやすく整理し、さらにパイピングとの違いまで図表で比較解説します。
現場実務にも試験対策にも役立つ内容をまとめました。
ヒービング・ボイリング・盤ぶくれ・パイピングの違い
ヒービング・ボイリング・盤ぶくれ・パイピングの違いはこちらです。ポイント
- ヒービング=横から押される(粘性土)
- ボイリング=砂が沸く(砂質土)
- 盤ぶくれ=底が持ち上がる(粘性土+水圧)
- パイピング=土が流れ出す(砂質土+浸透流)
ボイリング・盤ぶくれ・パイピングとの違い
ボイリング現象のなかに、盤ぶくれやパイピングが含まれるとイメージすると良いです。
ボイリング、盤ぶくれ、パイピングは、地下水が高い砂質土の場合起こります。
そしてさらに、盤ぶくれは難透水層がある場合、 パイピングは水みちがつくられやすい(杭などがある)地盤の場合 という条件が加わった状態です。
ポイントキーワードは【難透水層】と【水みち】です。
ヒービング・ボイリング・盤ぶくれ・パイピングの現象
ヒービング・ボイリング・盤ぶくれ・パイピングそれぞれの現象をみていきましょう。ヒービング
ヒービングとは、土留め背面の土の重量や地表面荷重などにより、すべり面が生じる現象です。
そのほか、土留壁が押し出され、掘削底面の隆起や周辺地盤の沈下が起こります。
- 掘削する底面付近にやわらかい粘性土があるとき
- 軟弱地盤などの塑性指数や含水比の高い土があるとき
塑性(そせい)とは、物体に力を加えると変形し、力を取り除いても元の形に戻らず変形が残る現象のことです。
そして塑性指数とは、液性限界と塑性限界の差のことで、土が塑性を示す幅を表しています。
Ip=Wl-Wp(塑性指数=液性限界ー塑性限界)- 液性限界とは、土が塑性体から液体に移るときの境界の含水比
- 塑性限界とは、土が塑性体から半固体に移るときの含水比
ヒービングを防ぐためには以下の方法があります。
- 土留め壁の根入れ長を長くしたり、矢板の板厚を増やしたりする(剛性を増す)
- 掘削底面下を地盤改良して、土のせん断強さを増やす
- 土留壁の背面地盤を切り下げて(盤下げ)ヒービングを減少させる
ヒービングについてさらに詳しくは以下の記事をご覧ください。
→ヒービングとは?メカニズム・原因・対策を解説ボイリング
ボイリングとは、土留め前面と背面の水位差により上向きの浸透流が生じ、掘削底面が沸騰したように湧き上がる現象のことです。
底面の土がせん断抵抗を失い、土留めの安定性が損なわれます。
液状化現象とも関連の深い現象です。- 地下水位の高い砂質土の場合
- 土留め付近に河川、海など地下水の供給源があるとき
ボイリングを防ぐためには以下の方法があります。
- 土留壁の根入れをながくする
- ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
- 地盤改良により地下水の回り込みを防止する
ウェルポイント工法とディープウェル工法は、軟弱地盤中の水を排除する「地下水位低下工法」です。
ディープウェル工法は井戸方式、ウェルポイントは排水管方式です。
地盤の圧密を促進するもので、脱水工法とも呼ばれます。
ボイリングについてさらに詳しくは以下の記事をご覧ください。
→ボイリングとは?原因・現象・対策を解説盤ぶくれ
盤ぶくれとは、難透水層下面に上向きの水圧が作用し、土の重さ以上になると掘削底面が浮き上がる現象です。
最終的に難透水層が突き破られると、ボイリングと同じ状態になります。
掘削底面付近が難透水層で、水頭の高い透水層の順で構成されている場合、盤ぶくれは起きやすいです。
難透水層には粘性土だけでなく、細粒分の多い砂質土も含まれます。
盤ぶくれを防ぐためには以下の方法があります。
- 土留壁の根入れを十分な安全率を確保できる難透水層まで伸ばす
- ディープウェル工法などで被圧層の地下水位を低下させる
- 地盤改良法で入江などをつくり、透水層を造成する
盤ぶくれについてさらに詳しくは以下の記事をご覧下さい。
→盤ぶくれとは?現象・原因・対策を解説パイピング
パイピングとは地盤のよわい箇所の土粒子が洗い流され、水みちがつくられ拡大してしまう現象です。
最終的にはボイリングと同じ状態になります。
ボイリングや盤ぶくれと同じ地盤(砂質土多め)で、水みちができやすい状態のとき、パイピングは起こりやすくなります。
杭の引き抜きあとやボーリング調査後、さらにはすでに打設した杭のまわりなどで水みちがつくられやすいです。
パイピングを防ぐためには以下の方法があります。
- ディープウェルやウェルポイントにより地下水を低下させる
- 地盤改良により地下水の回り込みを防止する
- 事前調査により、水みちになりやすい箇所かどうか確認する
パイピングについてさらに詳しくは以下の記事をご覧ください。
→パイピングとは?原因・メカニズム・対策まとめまたパイピングにはクイックサンド現象というものが生じます。
盤ぶくれ・ボイリング・ヒービング・パイピングの違いまとめ
掘削工事や地下水位の高い現場では、盤ぶくれ・ボイリング・ヒービング・パイピングといった地盤の不安定現象が発生することがあります。
これらは一見似た現象に見えますが、発生原因・土質・地下水との関係はそれぞれ異なり、正しく区別することが重要です。
盤ぶくれやヒービングは、主に掘削による応力解放や側方拘束によって地盤が変形する現象で、特に粘性土で発生しやすいのが特徴です。
一方、ボイリングやパイピングは、地下水の浸透水圧が支配的となる現象で、砂質土において水とともに土粒子が移動・流出します。
これらを混同すると、現象に合わない対策を選定してしまい、施工トラブルや安全性の低下につながるおそれがあります。
そのため、現場条件(土質・地下水位・掘削状況)を踏まえ、どの現象が起きているのかを正確に判断することが、設計・施工管理の基本となります。
今回は以上です。
ありがとうございました。