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TDMとは?交通需要マネジメントの都市交通計画まるっと解説

TDMとは何?

今回のテーマは【TDM(Transportation Demand Management)】

土木分野では都市計画や交通関連の基礎知識であり、「交通需要マネジメント」と呼ばれます。

定義から内容までサクッと解説していきますのでぜひどうぞ!

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からご覧ください。

 

TDMとは?交通需要マネジメントの都市交通計画まるっと解説

都市計画や交通関連で使われる【TDM】とはTransportation Demand Managementの略で、日本語では「交通需要マネジメント」と呼ばれます。

TDMは、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化を行います。

いわゆる「交通需要の調整」ですね。

よってTDMの取り組みにより、道路交通混雑を緩和していくことが可能となります。

 

TDM(交通需要マネジメント)の具体例

それではTDMの具体例についてみていきます。

考えられる内容はこんな感じです。

TDMの具体例

  1. 交通手段の変更
  2. 交通経路の変更
  3. 時間帯の変更
  4. 自動車の効率的利用
  5. 発生源の調整

交通手段の変更

自動車から鉄道やバスなどの公共交通機関への変更を促し、混雑を緩和します。

そのほか、パークライド(パーク&バスライド)駐車場の利用が挙げられるでしょう。

また、鉄道の案内情報の充実や利用しやすい車両、施設への改造、LRT、コミュニティバスの整備など、利便性を向上させていくことも大切です。

さらに自転車利用の環境整備も行うことも、交通手段変更のひとつです。

項目 TDM施策
複数手段の組み合わせ パーク&ライド
パーク&バスライド
キス&ライド
ライド&ライド
サイクル&ライド
サイクル&バスライド
バス走行条件の改善 バス専用道
バス専用レーン
交差点でのバス優先方策
バス停でのバス優先方策
高速道路でのバス専用ランプ
バスサービスの改善 バス車両の改善(乗降等)
バス路線の運用
バス停車方式(快速、フリー乗降等)
バスターミナル整備
バス停整備
案内情報
バスロケーションタイム
バス運賃制度
鉄軌道サービスの改善 均一運賃
共通運賃制度
時差料金制度
運行ダイヤ改善
路線の相互乗り入れ
車内情報提供
新しい交通システムの改善 乗合タクシー
LRT
都市水上バス
短距離交通システム(キャビン型)
動く歩道

交通経路の変更

カーナビによる渋滞情報や、駐車場情報の提供などにより、混雑する道路の交通を分散させ、交通需要の空間的な平準化を行うことができます。

また交通管理者による交通管制の高度化など、より精度の高い情報が求められています。

項目 TDM施策
通信技術活用による交通円滑化 通信による交通誘導
駐車場案内システム
駐車場誘導システム

時間帯の変更

朝夕の通勤ラッシュにおける交通をピーク時間外にシフトさせ、交通需要の時間的な平準化を行います。

たとえば、フレックスタイムの促進や、物流における朝夕の時間帯を避けた配達、ジャストインタイム、商習慣(5・10日等)の見直しなどが挙げられます。

項目 TDM施策
通勤時間の変更 時差通勤
フレックスタイム
勤務時間の変更 圧縮勤務

自動車の効率的利用&抑制

相乗り(カープール)や共同利用(カーシェアリング)、共同集配・輸送など、車やトラックの乗車率や積載率を高めて、交通混雑を緩和しようする取り組みです。

項目 TDM施策
自動車利用の効率化 相乗り(カープール、バンプール)
HOVレーン
物流システムの合理化
自動車利用の抑制 ジャストインタイムの見直し
持ち帰り車の排除
5・10日商習慣の見直し

交通発生源の調整および抑制

自動車交通の発生量を調整したり、抑制したりするものです。

たとえば、具体例を挙げると以下のとおり。

交通発生の調整(抑制)

  1. 在宅勤務
  2. 職住近接のまちづくり
  3. カーフリーデーの実施
  4. ロードプライシング
  5. ナンバー規制
  6. 炭素税(環境税)
項目 TDM施策
発生量の削減 ノーマイカーデー
在宅勤務
SOHO
テレコミューティング
自動車流入の制限 ロードプライシング
車両ナンバー規制
トラフィックセル
トランジットモール
コミュニティ道路
環境税

とくにトランジットモールとは、安全な歩行空間のこと。(一般車両は通行禁止)

ラドバーンとも関連する内容です。

中心市街地やメインストリートなどの商店街を歩行空間(モール)として整備するとともに、バスや路面電車など公共交通(トランジット)だけを通行させます。

そしてモール内や外部空間とモールを結ぶ安全で快適な移動手段として活用されています。

TDMとマルチモーダル交通施策の違いと共通点

一方、TDMと比較されるのがマルチモーダル交通施策です。

違いや共通点は以下のとおり。

マルチモーダル交通施策 共通 TDM施策
空港、湾岸、駅などの交通拠点へのアクセス強化

鉄道と高速バスの結節強化

バリアフリーの歩行空間の整備

駅前広場の整備

歩行者支援施設の整備

アクセス道路の整備

バスの使いやすさ向上

  • バス路線の整備
  • バスレーンのカラー舗装化
  • バス停のハイグレードなど

パーク&ライド

パーク&バスライド

バスやPTPS(公共車両優先システム)の整備

共同集配の実施

ロジティクスセンターなどの整備

道路交通・駐車場情報の提供

大量公共輸送機関の再編成等利用促進

地下鉄や路面電車の整備支援

新交通システム、都市モノレールの整備支援

トランジットモールの導入

自転車利用の促進

自転車レーン、自転車駐車場の整備など

相乗り(カープール)やシャトルバス

フレックスタイムや時差通勤・通学

ロードプライシング

相乗り車(HOV)優先レーンの整備

駐車場マネジメント

TDM(交通需要マネジメント)調査の手順と課題

TDM調査の手順は以下のとおりです。

①現況分析
②問題把握
③施策提案
④需要予測
⑤施策評価 ⑤-1試行実験
⑤-2実験からの解析
⑤-3実験からの施設評価
⑥施策実施

基本的な交通体系は、パーソントリップ調査の分析結果を基に基本計画が策定されます。

しかしパーソントリップ調査は10年に1回程度の実施であるため、社会情勢の変化がどれだけ反映されているかは疑問です。

またTDM施策を実施に移すのは、基本データも十分でなくリスクも大きいことから、行政サイドもなかなかできないのが現状でしょう。

さらにTDM施策の評価はB/C(費用便益分析)が基本ですが、それらを踏まえた評価指標の設定や定量化などが課題と言えます。

一個人としては、これらの課題を乗り越え、TDM施策が推進されていくことを切に願います。

TDMとは?交通需要マネジメントの都市交通計画まとめ

都市計画や交通関連で使われる【TDM】とはTransportation Demand Managementの略で、日本語では「交通需要マネジメント」と呼ばれる

TDMは、自動車の効率的利用や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して、発生交通量の抑制や集中の平準化を行う

項目 TDM施策
複数手段の組み合わせ パーク&ライド
パーク&バスライド
キス&ライド
ライド&ライド
サイクル&ライド
サイクル&バスライド
バス走行条件の改善 バス専用道
バス専用レーン
交差点でのバス優先方策
バス停でのバス優先方策
高速道路でのバス専用ランプ
バスサービスの改善 バス車両の改善(乗降等)
バス路線の運用
バス停車方式(快速、フリー乗降等)
バスターミナル整備
バス停整備
案内情報
バスロケーションタイム
バス運賃制度
鉄軌道サービスの改善 均一運賃
共通運賃制度
時差料金制度
運行ダイヤ改善
路線の相互乗り入れ
車内情報提供
新しい交通システムの改善 乗合タクシー
LRT
都市水上バス
短距離交通システム(キャビン型)
動く歩道

以上です。

ありがとうございました。

 

この記事を書いた人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員(土木職)の土木ブロガー💻
  • 国立大学★土木工学科卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の地方公務員(土木職)に合格!7年間はたらいた経験をもつ
  • 1級土木施工管理技士・危険物取扱者(乙)・玉掛け等の資格もち
  • ブログで土木、土木施工管理技士の勉強方法や公務員のあれこれ、仕事をメインにさまざまな情報を発信
  • 書籍【土木技術者のための土木施工管理の基礎】好評発売中!

 

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