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土留め工法の種類&比較表!土留め壁の土留め方式を図解でチェック

土留め工法や土留め壁の種類が知りたい

こんなお悩みを解決します。

土留め工法や土留め壁の種類はたくさんあり、特徴もさまざまです。

土留め工法の種類や、土留め壁の土留め方式などをまとめましたので参考にしてください。

 

それではさっそく参りましょう、ラインナップはこちらです。

 

土留め工法の種類・比較表

土留め工法の種類は大きくふたつに分けられます。

  1. 既製矢板による工法
  2. 現場打ちコンクリート(またはモルタル)による工法

その内訳は以下のとおりです。

既製矢板による工法

  1. 親杭横矢板工法
  2. 鋼矢板工法
  3. 鋼管矢板工法
  4. 既製コンクリート工法
  5. 木矢板工法

現場打ちコンクリートやモルタルによる工法

①地中連続壁工法

②柱列式連続壁工法

  1. モルタル柱列壁
  2. ソイルセメント柱列壁
  3. 泥水固化壁

フローチャートにするとこんな感じです。(以下図、参照)

 

土留め工法における土留め壁の種類と特徴をさらに詳しく

土留め壁の構造形式と特徴をそれぞれみていきましょう!

土留め工法&土留め壁➀親杭横矢板工法

構造形式は以下のとおり。

親杭と横矢板によって構成されています。

また特徴はこんな感じです。

  1. 施工が比較的かんたん
  2. 止水性がない
  3. 土留め板と地盤のあいだにスキマができやすいため、地山の変形が大きくなる
  4. 根入れ部が連続していないため、軟弱地盤への適用には限界がある
  5. 地下水位の高い地盤や軟弱地盤においては、補助工法が必要となることがある

土留め工法&土留め壁②鋼矢板工法

構造形式は、鋼矢板の継手部を組み合わせます。

【特徴】

  1. 止水性がある
  2. 鋼矢板は、たわみ性があるため変形が大きくなる
  3. 打設時や引き抜き時に騒音・振動などが問題になることがある(その場合、低騒音・低振動工法を採用する)
  4. 引き抜きをすることによって、周辺地盤の沈下が起こると予想される場合は、残置することを検討する
  5. 鋼矢板が長くなればなるほど、傾斜や継手の離脱が生じやすく、引き抜き時の地盤沈下も大きい

土留め工法&土留め壁③鋼管矢板工法

構造形式は、鋼管矢板の継手部をかみ合わせます。

【特徴】

  1. 止水性がある
  2. 剛性が比較的大きいため、地盤変形が問題となる場合に適する
  3. 打設時や引き抜き時に騒音・振動などが問題になることがある(その場合、低騒音・低振動工法を採用する)
  4. 引き抜きはむずかしく、残置することが多い
  5. 本体構造物として利用されることもある

土留め工法&土留め壁④既製コンクリート矢板工法

構造形式は、規制コンクリート矢板を土留め壁として使用します。

【特徴】

  1. 既製のコンクリート矢板を使っている
  2. ある程度の止水性がある
  3. 変形しない
  4. 強度がつよい
  5. 圧縮強さがあるが、引張の力に弱い

土留め工法&土留め壁⑤木矢板工法

土留め壁に木の矢板を使用した工法です。

【特徴】

  1. 木材を使っている
  2. 費用が安い
  3. 止水性がない
  4. 土留め板と地盤のあいだにスキマができやすいため、地山の変形が大きくなる。
  5. 変形が大きい
  6. 強度がよわい

土留め工法&土留め壁⑥地中連続壁工法

安定液を使って、掘削した壁状の溝のなかに鉄筋かごを入れて場所打ちコンクリートを打設します。

地中連続壁とは、安定液を使って掘削した溝に鉄筋かごを入れ、コンクリートを打設して地中に連続した鉄筋コンクリート壁を構築する工法です。

RC連壁とも呼ばれています。

【特徴】

  1. 止水性がある
  2. 剛性が大きいため、大規模な開削工事、地盤変形が問題となる場合に適する
  3. 騒音・振動が小さい
  4. 施工期間が比較的長い
  5. 泥水処理施設が必要なため、広い施工スペースが必要である
  6. 本体構造物(躯体の基礎)として利用されることもある
  7. 地下水流速が3m/分以上あるときは適用できない(しにくい)
  8. 撤去はできない
  9. 適用地盤の範囲が広く、適切な掘削機械をえらべば軟岩にも適用できる
  10. 軟弱地盤では溝壁がこわれやすいため注意が必要

土留め工法&土留め壁⑦柱列式連続壁工法

柱列式連続壁工法にはいくつか種類があります。

モルタル柱列壁

現地盤をモルタルやソイルセメントなどで置換した柱列壁に形鋼などの芯材を挿入する工法です。

【特徴】

  1. 柱同士が重なり合わせる場合、比較的止水性はよい
  2. 柱同士を重なり合わせない場合、止水性は低くなり、背面地盤の改良が必要になることがある
  3. 親杭横矢板や鋼矢板壁に比べ剛性が大きいため、地盤変形が問題になる場合に適する
  4. 騒音・振動が小さい
  5. 引き抜きはむずかしく、残置することが多い
  6. 適用できる地盤は比較的広いが、100mm以上のレキを含む砂レキ層や玉石層には適用できない(しにくい)

 

ソイルセメント柱列壁

構造形式はモルタル柱列壁とほぼ同じです。

【特徴】

  1. モルタル柱列壁とほぼ同じ
  2. 柱同士が重なり合わせる場合、比較的止水性はよい
  3. 柱同士を重なり合わせない場合、止水性は低くなり、背面地盤の改良が必要になることがある
  4. 親杭横矢板や鋼矢板壁に比べ剛性が大きいため、地盤変形が問題になる場合に適する
  5. 騒音・振動が小さい
  6. 引き抜きはむずかしく、残置することが多い
  7. 適用できる地盤は比較的広いが、100mm以上のレキを含む砂レキ層や玉石層には適用できない(しにくい)
  8. 地盤種別によって性能に差が出る(とくに有機質土では強度が期待できない)

 

泥水固化壁

安定液を使って、掘削した壁状の溝のなかに鉄筋かごを入れて場所打ちコンクリートを打設します。

【特徴】

  1. 地中連続壁とほぼ同じ
  2. 地中連続壁にくらべ剛性が小さいため、適用範囲が限られる
  3. 止水性がある
  4. 剛性が大きいため、大規模な開削工事、地盤変形が問題となる場合に適する
  5. 騒音・振動が小さい
  6. 施工期間が比較的長い
  7. 泥水処理施設が必要なため、広い施工スペースが必要である
  8. 本体構造物(躯体の基礎)として利用されることもある
  9. 地下水流速が3m/分以上あるときは適用できない(しにくい)
  10. 撤去はできない
  11. 適用地盤の範囲が広く、適切な掘削機械をえらべば軟岩にも適用できる
  12. 軟弱地盤では溝壁が壊れやすいため注意が必要

 

土留め工法&土留め壁における掘削方法の種類と特徴

土留めをおこなうときの掘削方法も種類がいくつかあります。

土留めの掘削工法の種類は以下のとおりです。

  1. のり切りオープンカット工法
  2. 土留め壁オープンカット工法(全断面掘削工法)
  3. アイランド工法
  4. トレンチカット工法

それでは、それぞれの掘削工法の特徴についてみていきましょう。

のり切りオープンカット工法

のり切りオープンカット法は、その名のとおり、オープンに開削し、構造物を設置する方法です。

土留め壁や切ばりなどは使いません。

【概略図】

【特徴】

  1. 地盤に法面をつくり、構造物を設置する
  2. 矢板やコンクリートなどの土留め壁を使わない(地盤を土留めとみなす)
  3. 軟弱地盤には適さない

土留め壁オープンカット工法・全断面掘削工法

土留め壁オープンカット法は、土留め壁や切ばり、腹起しなどを使う工法です。

施工が比較的簡単で、制限が少ないため、土留め関連ではよく使われます。

【概略図】

土留め壁を自立させるか、あるいは切りばりやアンカーによって支持して全面を掘削する工法です。

【特徴】

  1. よく使われる工法(実績多い)
  2. 立地・地盤・掘削深さなどの制限が少ない
  3. 施工が比較的かんたん
  4. 地盤が不整形な掘削がされていたり、地盤の平面規模が大きい場合、土留め壁の変形が大きくなり、周辺地盤への影響が大きい

アイランド工法

アイランド工法は、外周に土留め壁を打設して、その内側に法(ノリ)を残しながら内部を掘削します。

つぎに掘削中央部に構造物の基礎をつくって、その基礎部分から斜めに切ばりを設置。

そして法部分を掘削していき、構造物の残りの部分をつくる方法です。

【概略図】

 

【特徴】

  1. 掘削面積が広くて浅い場合に適する
  2. 地盤が軟弱で全断面掘削(オープンカット)ができない場合に有効
  3. 掘削平面形状が不均一で、切ばりの設置がむずかしい場合や、傾斜地などで片側土留めとなる場合に有効
  4. 切ばりの材料費・組み立て・解体費用が少ない
  5. 掘削深さが深いときは、中央先行部の範囲がせまくなるためあまり使われない
  6. 地下構造物が分割施工となり、工期が長くなる
  7. 打ち継ぎ目の処理には注意が必要

トレンチカット工法

トレンチカット工法は、つくる構造物の外周部分に土留め壁を二重に打設して、そのあいだを溝掘りして構造物を施工します。

そして構造物で土圧を支えながら内部の掘削をして、さらに中央部に構造物をつくっていく工法です。

【トレンチカット工法の概略図】

 

【トレンチカット工法の特徴】

  1. 掘削面積が広く、浅い場合に適する
  2. 軟弱地盤の場合、ヒービング防止策として利用されることがある
  3. 安全で確実な工法であるが、土留め材料が多いことや施工期間が長くなるため、費用がかかる

 

土留め工法による土留め壁の根入れ長さや杭深さの基準

土留めが安定を保つためには、土留め壁の根入れを必要なだけ確保しなければなりません。

土留め壁の根入れ長さは、以下に示す根入れ長さの検討内容や基準のうち、もっとも長いものを採用してください。

土留めの根入れ長さや深さの基準

  1. 最小根入れ長さは3.0m。ただし、親杭の場合は1.5mとする。
  2. 掘削底面の安定から必要となる根入れ長さ
  3. 土留め壁の許容鉛直支持力から定まる根入れ長さ
  4. 根入れ部の土圧と水圧に対する安定から必要となる根入れ長さ
  5. 根入れ長さは掘削完了時および最下段切ばり設置直前のときに、それぞれつり合い深さの1.2倍以上を確保する。

一方、土留め工法に関連する土留め支保工の形式や特徴については、以下の記事でくわしく書いていますのでそちらをご覧ください。

【土木】土留め(土止め)支保工の種類&工法まとめ

 

土留め工法や土留め壁の種類まとめ

土留めまとめ

土留め壁の種類

  • 土留め壁は大きく分けて既製矢板と現場打ちコンクリートの2種類に分けられる。

①既製矢板による工法

  1. 親杭横矢板工法
  2. 鋼矢板工法
  3. 鋼管矢板工法
  4. 既製コンクリート工法
  5. 木矢板工法

②現場打ちコンクリート(またはモルタル)による工法

  1. 地中連続壁工法
  2. 柱列式連続壁工法(モルタル柱列壁、ソイルセメント柱列壁、泥水固化壁)

土留め工法・土留め壁での掘削工法の種類

  1. のり切りオープンカット工法
  2. 土留め壁オープンカット工法(全断面掘削工法)
  3. アイランド工法
  4. トレンチカット工法

土留め工法による土留め壁の根入れ長さや深さの基準

  1. 最小根入れ長さは3.0m。ただし、親杭の場合は1.5mとする。
  2. 掘削底面の安定から必要となる根入れ長さ
  3. 土留め壁の許容鉛直支持力から定まる根入れ長さ
  4. 根入れ部の土圧と水圧に対する安定から必要となる根入れ長さ
  5. 根入れ長さは掘削完了時および最下段切ばり設置直前のふたつのときに、それぞれつり合い深さの1.2倍以上を確保する。

今回は以上です。

ありがとうございました。

この記事を書いている人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員の土木ブロガー💻
  • 国公立大学の土木工学科卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の公務員(土木職)として7年間はたらいた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • 1級土木施工管理技士、玉掛、危険物取扱者乙4などの資格もち
  • 今はブログで土木施工管理技士の勉強方法や土木知識をメインにさまざまな情報発信をしています。
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