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高度浄水処理★処理物質と処理方法ていねい解説

高度浄水処理

地域によっては、家庭やビル、工場などからの雑排水の河川への流出により、通常の浄水方法だけでは不十分な場合があります。

そんなとき、水道として処理すべき物質を除去するため【高度浄水処理】が行われます。

水道事務所で働いていた筆者が、処理物質や処理方法をまとめましたので参考にしてください。

それではさっそく参りましょう、ラインナップは目次からどうぞ 🙂

 

この記事を書いた人

名前:ちゃんさと
  • 元公務員の土木ブロガー💻
  • 国立大学の土木工学科卒業(学士)
  • 大学卒業後、某県庁の公務員(土木職)として7年間働いた経験をもつ(計画・設計・施工管理・維持管理)
  • 水道事務所での勤務経験あり
  • 転職活動経験あり(現在フリーランス)
  • 1級土木施工管理技士、玉掛け、危険物取扱者乙4などの資格もち
  • 今はブログで土木施工管理技士の勉強方法や公務員のあれこれ、仕事をメインにさまざまな情報発信中!

高度浄水処理★処理対象物質と処理方法

【浄水施設】

浄水場

まずは、安全な水道水をつくるため、処理すべき対象物質と方法について簡単にまとめましたのでご覧ください。

処理対象物質 処理方法
臭気 エアレーション
生物処理
活性炭処理
オゾン処理
トリクロロエチレン ストリッピング処理
活性炭処理
アンモニア態窒素 塩素処理
生物処理
トリハロメタン 中間塩素処理
活性炭処理
結合塩素処理
鉄・マンガン 前塩素処理
マンガン接触ろ過
鉄バクテリア利用法
エアレーション
陰イオン界面活性剤 生物処理
活性炭処理
オゾン処理
色度(フミン質) 活性炭処理
オゾン処理
侵食性遊離炭酸 エアレーション
アルカリ剤処理
生物 マイクロストレーナ
二段凝集処理
多層ろ過
酸処理

 

高度浄水処理の内容をさらにくわしくみていきましょう。

高度浄水処理として代表的な処理方法は以下の4つです。

高度浄水処理

  1. 生物処理
  2. オゾン処理
  3. 活性炭処理
  4. ストリッピング処理

生物処理

生物処理は、生物の自然浄化作用を人為的に水槽などのなかで効率よく進めます。

微生物の付着する充填剤あるいは円板等を水槽内に設置し、生物膜を形成させて水との接触時間を長くしたものです。

例えば、ハチの巣型である「ハニコームチューブ」に付着した微生物の働きにより、水中の溶存物を分解したり、酸化したりできます。

ハチの巣型

そして通常の浄水処理では十分に除去できない

  • アンモニア態窒素
  • 藻類
  • 臭気物質
  • 陰イオン界面活性剤
  • マンガン

などに対して効果があります。

しかし、生物膜中の微生物の生物化学反応は制御がむずかしく、対象物質を完全に除去することは困難です。

さらに水温の影響を受けやすく、水温が下がると処理効果が悪くなります。

 

オゾン処理

オゾンは空気中の酸素からつくった気体で、強い殺菌力をもっています。

そのため水中の「カビ臭」などを分解することができ、水中のマンガンの酸化や水の消毒もできるのです。

また粒状活性炭処理と組み合わせると、カビ臭はほぼ完全に取り除くことができ、①トリハロメタンおよびその②前駆物質も大幅に低減されます。

さらに寄生原虫の③クリプトスポリジウム(耐塩素性病原微生物)に対しても効果があります。

ただしオゾンには残留性がないために、活性炭処理および塩素消毒との併用が必要です。

用語 解説
①トリハロメタン メタンの4つの水素のうち、3つがハロゲンである塩素(Cl–)、臭素(Br–)などに置換された化合物

発がん性のおそれがある

②前駆物質 化学反応において目的とする生成物の前段階にある一連の物質のこと
③クリプトスポリジウム(耐塩素性病原微生物) クリプトスポリジウムとは耐塩素性病原微生物のこと

水道水の原料となる河川水などがクリプトスポリジウムで汚染された場合でも、ろ過施設を用いた適切な浄水処理を行い、濁りを取り除くことで除去が可能

とくにトリハロメタンの低減のためには、前塩素処理よりも、沈殿池とろ過池との間で塩素剤を注入する中間塩素処理のほうが良いと知られていますよ 🙂

 

活性炭処理

活性炭処理とは、粉末または粒状の活性炭と水を接触させ、異臭味、色度、陰イオン界面活性剤、フェノール、残留塩素、トリハロメタンおよびその前駆物質などを除去する方法です。

身近で言えば、活性炭は冷蔵庫の脱臭剤としても使われているね!

活性炭処理とオゾン処理を組み込んだ高度処理システムなどがあります。

オゾン処理&活性炭処理

【オゾン処理と活性炭処理を組み込んだ高度処理システム】

活性炭はその形状から粉末活性炭と粒状活性炭に分けられ、処理形態によって使い分けられていますが、活性炭としての効能(物性、吸着機構)は同じです。

活性炭はこの性質を利用して、通常の浄水処理では十分に除去できない、以下のような臭気物質を処理できます。

臭気物質

  1. ジェオスミン
  2. 2-メチルイソボルネオ―ル
  3. 非イオン
  4. 陰イオン界面活性剤
  5. フェノール類
  6. トリハロメタンおよびその前駆物質
  7. トリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物
  8. 農薬等の微量有害物質
  9. 水源域での事故などにより一時的に混入する油類(化学物質)
  10. その他の有機物

 

ストリッピング処理(揮散処理)

ストリッピング処理とは、水と空気を十分に接触させて、水中に含まれる揮発性物質を大気中に揮散する処理方法です。

設備的にはエアレーション処理と同じで、トリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物を除去するのに効果があります。

 

そのほか、高度浄水処理とまではいかなくとも、通常の浄水処理に付加して特定物質の除去を行う処理方法は以下のとおりです。

付加処理方法

  1. 前塩素・中間塩素処理
  2. エアレーション
  3. アルカリ剤処理
  4. 酸処理

前塩素・中間塩素処理

塩素は基本的に水の消毒目的ですが、凝集沈殿池以前の処理過程の水に注入する場合と、沈殿池とろ過池の間で注入する場合があり、それぞれを前塩素処理、中間塩素処理と呼んでいます。

ただし、緩速ろ過方式の場合には塩素がろ過膜生物に障害を与えますので、原則として前塩素・中間塩素処理はおこないません。

この処理効果は以下のとおり。

塩素処理の効果

  1. 原水中の細菌を減少させること
  2. 藻類、小型動物などの生物を死滅させること
  3. 鉄、マンガンを不溶性の酸化物として除去すること
  4. アンモニア態窒素、その他の有機物などを酸化分解すること
  5. 硫化水素臭、下水臭、藻臭などの異臭を除去すること

なお、中間塩素処理はトリハロメタン前駆物質やカビ臭物質を水中に放出する藻類などを凝集沈殿によりできるだけ除去した後に塩素処理するもので、トリハロメタンやカビ臭を減らすことができます。

 

エアレーション

エアレーションとは、水と空気を十分に接触させて、水中に含まれるガス状物質を処理後大気中に放出させたり、空気中の酸素を取り入れて水中に含まれる酸化されやすい物質の酸化を促進させたりする処理方法です。

ストリッピング処理も含まれるよ!

エアレーションは、

  • 水中の遊離炭酸を除去してpH値を上昇させること
  • 揮発性有機塩素化合物を除去すること
  • 溶存している鉄を酸化して除去すること
  • 硫化水素などの不快な臭気を除去すること

などに効果的な処理方法です。

 

アルカリ剤処理

浄水処理の工程で、凝集剤や液化塩素の使用量が多い場合や侵食性遊離炭酸を多く含む場合には、浄水のpH値が低下し、腐食性を強め、水道施設にさまざまな障害を与えます。

たとえば、コンクリート材を劣化させたり、鉄、銅などの金属製の水道管では、それぞれの成分が溶出したりしやすくなりますので注意が必要です。

これらの対策として、フロック形成後にアルカリ剤を注入してpH値の調整します。

とくに送・配水管の保護を目的としたpH値の調整は有効です。

なお、凝集効果を高める目的でもアルカリ剤を注入している場合がありますが、この場合の注入点はフロック形成以前であるという違いがありますので覚えておきましょう。

 

酸処理

生物の光合成作用によりpH値が高くなる貯水池や湖沼を水源とする場合には、恒常的あるいは一時的に原水のpH値が高すぎることがあります。

そんなときには、酸剤をフロック形成以前に注入し、pHの調整を行います。

 

 

以上です。

そのほか、水道および下水に関する記事は以下のとおり。

興味のある方はぜひご覧ください。

ありがとうございました。

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